著者
林 友直 岡本 良夫 横山 幸嗣 細川 繁 冨田 秀徳 升本 喜就
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.531, pp.19-25, 2003-12-12
被引用文献数
1

その生息域が余りにも広大なため生態の多くが謎に包まれている鯨の生態解明を目指して進めている衛星システムについて述べる。その発端は平成5年に催された第一回衛星設計コンテストに応募し入賞した計画であって、衛星が具えている地球規模データ取得能力を利用している。これは極軌道上を周回する小型衛星により、海上の鯨にとり付けた発信器から送られる種々の生態情報を受信、処理、記録する。地上管制局上空を衛星が通過するとき指令電波を送り、衛星内部に記録された生態情報を地上局に送信させ、これを処理解析するというものである。この衛星(WEOS)は平成14年12月14日、H2Aロケット4号機により地球観測衛星ADEOS-2を打ち上げるさいのピギーバック衛星の一つとして高度800kmの極軌道に投入された。その後重力傾度安定化用マストの伸展にかかわる軌道上運用を経て、衛星アンテナは常に地球を指向しつつ極めて正常に動作している。目下鯨に対する発信器の装着作業を進めているところであるが、このシステムは鯨の生態解明のみならず海難救助、陸棲動物の生態調査、地上環境の監視等にも広く応用が可能である。