著者
出口 修至
出版者
国立天文台
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、低周波で明るく輝く電波源の位置や強度、スペクトルを観測し、それらの起源を、遠方の銀河団に付随するものか、あるいは銀河系内の比較的近傍に存在する低温矮星(または惑星)に付随するものか、を明らかにする事である.平成22年度には、前年度と同様にインドの大型電波干渉計(GMRT)によりさらなる観測を行い、遠方銀河団に付随すると思われる天体8つについて観測データーを得た.また、ヨーロッパで行われた関連する低温度星の研究会に出席し、研究発表を行った,前年度得た低温矮星候補天体についての詳細なデーターの解析、および本年得たデータの解析を行った.同望遠鏡で得た観測データーにはインドの干渉計に特有な電波雑音が無数に載っており、その除去に非常に手間取り解析が遅れたが、低温矮星候補天体のデーターについてはほぼ解析を終了し、現在結果を論文に纏めている.主要な成果は、低周波電波源のうち、その位置が低温矮星に1秒角以内で一致するものが2個有り、そのスペクトルは1.4GHzにピークを持ち、また数分の時間スケールで電波強度が変動している、という事が明らかになった事である。これらの事実は、電子サイクロトロンメーザー等の放射機構により低温矮星(あるいはその周囲を巡る惑星)から低周波電波が来ている事を強く示唆するものである。この結果は、かなりの数の低周波電波源が銀河系内天体に付随する可能性を示したという意義が有る。これは、今後発展するであろう低周波電波天文学の一つの方向性を決定づける重要な結果であると思われる。