- 著者
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相馬 充
谷川 清隆
- 出版者
- 国立天文台
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2005
我々の研究は西暦628年(推古天皇36年)の日本書紀最初の日食記録が記録どおりに皆既日食であったことを明らかにしたことに端を発している.これにより,過去の地球自転速度変動を明らかにすることの重要性が認識されたためである.我々は地球自転回転角パラメータΔTと同時に月の潮汐項を決める手法を開発し,これによって,まず,紀元前200年以降,現在まで,月の潮汐項がほぼ一定であることを明らかにした.これは,紀元前198年から紀元前181年までの中国とローマにおける皆既日食と金環日食の記録,および,紀元後616年,628年,702年の中国と日本における皆既日食や皆既に近い日食と紀元後681年の日本の火星食の記録などから判明した事実である.ΔTの値については,紀元後1年以後1200年までの中国や欧州の日食記録を調査し,454年と616年の間に3000秒以上の急激な減少が,また,873年と912年の間に600秒以上の急激な減少があったが,その他には特に目立った変化がないことがわかった.さらに,ΔTの値が他の期間では減少傾向にあるのに対して,616年と873年の間ではほとんど変化がないか,むしろやや増加していることが明らかになった.これは,西暦628年と873年の日本の日食記録,616年,702年,729年,761年,822年の中国の日食記録と840年のベルガモ(イタリア)の日食記録などから判明したものである.この他,ΔTの決定には,月食の時刻記録も有用であり,将来の解析に用いるため,世界の古代におけるこれらの記録を収集し,計算機で扱えるファイルとして保存する作業も行った.