著者
幸山 正 滝澤 始 出崎 真志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

気管支喘息基底膜の肥厚が喘息の病態に関わることが報告され、肺線維芽細胞の過剰反応の関与が示唆されている。老化がリモデリングにはたす役割の変化を明らかにするために、若年細胞としてはWI-38細胞のPDL (population doubling level) 23-27を、老化細胞としてPDL39-45を使用した。気管支喘息におけるエフェクター細胞の一つである肥満細胞から産生され、喘息の病態形成に重要とされるヒスタミンやPGD2の老化細胞に対する効果の変化を検討した。前年度はBoyden blind well chamberやGel Contraction法で老化細胞の遊走能、収縮能を検討したが、今年度は蛋白産生能について検討した。組織の細胞自身が産生するサイトカインに引き寄せられる、好中球、好酸球などの炎症細胞による末梢組織に対する効果はリモデリングを検討するうえで重要であることから、今回は老化線維芽細胞からのIL-8の産生能の違いについて若および老化細胞で比較検討した。老化細胞は若年細胞よりIL-8の産生能は低かった。しかしアレルギー炎症に関与するヒスタミンやPGD_2に対する反応には大きな差を認めなかった。これらのことから老化肺では線維化過程自体が減弱していることが示された。この研究から気管支喘息を含めリモデリングが病態形成に関わる疾患は老化に伴いその病勢は低下する可能性が示唆された。