著者
吉野 由美子 別府 あかね 前川 賢一 古橋 友則
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.3, 2009

視覚障害者に対する相談窓口や歩行・日常生活訓練、便利グッズの普及などのシステムづくりを行おうとする時、県や市町村の担当者との相互理解なしでは、システムづくりは難航し、また頓挫してしまうのは明らかな事である。しかし、視覚障害者は身体障害者手帳所持者全体の約1割と数が少なく、視覚障害リハビリテーションとは何かと言うことや、どんな専門家がいるのかと言うことも、一般の人だけでなく、福祉・教育などの行政担当者にもほとんど知られていないのが現状である。<br> このシンポジウムでは、県の費用を使って研修に行き、視覚障害者生活訓練指導員の認定資格を得て高知に戻って来たが、「ニーズがない」と言う理由で、仕事に就けなかった別府さんが、どのように働きかけて行政担当者の理解を得られたか。三重県で、盲学校や市町村に職員を派遣し、視覚リハを展開している前川さんに、どのようにして盲学校や市町村と契約を結んで来たか、そして、県費で15人の視覚障害者生活訓練指導員をつくる計画を承認させた静岡の古橋さんに、なぜそのようなことが出来、現状はどうなっているのかを語っていただく事を通して、視覚障害リハビリテーションの必要性とその効果について、どのようにして行政担当者の理解を得、公的な予算を引き出すことが出来るかについて、地域のそれぞれの条件を超えた共通点を見いだし、これから地域で視覚障害リハビリテーションシステムを構築し、また専門家としてやりがいのある職場をつくって行こうとしている人達に、その方法論を学んでいただくと共に、共に共感し、相談できるつながりをつくって行くことを狙いとしている。
著者
別府 あかね
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.29, 2011

高知県東部に在住している盲ろうの兄妹2名に「南海地震に備えての避難訓練」を実施した取り組みについて発表する。<BR> これは県福祉保健所と市町村の福祉事務所が『在宅要医療者への災害支援と協力者のネットワーク作り』を目的とした取り組みの一環である。<BR> この事例は、在宅酸素療養者(肺の疾患で常に酸素療法を必要としている者)の中に目と耳に障害のある盲ろう者がおり、その支援をする為に視覚障害者生活訓練指導員として関わった。<BR> 最初に県福祉保健所の保健師、作業療法士、市福祉事務所の保健師、視覚障害者生活訓練指導員、盲ろう者通訳介助者(手話通訳士)2名の計6名を中心に、本人たちに対して南海地震とはどんな地震かという地震に対する基礎知識の勉強から始まり、地域の民生委員、自主防災組織、地区の常会との連携をとり、関係者に対しては簡単な手話講座や手引き講習を行い、最終的には実際に避難訓練を実施した。<BR> この盲ろう者は生まれつき耳に障害があり、後に視覚障害となったろうベースの盲ろう者であり、コミュニケーション手段は触手話(手話を触って会話する)である。県東部(高知市内から車で2時間)に在住で、近隣には盲ろう者向けの通訳介助者は在籍しておらず、この取り組み時も高知市内から通訳介助者を派遣して行った。そのため実際の災害時には通訳介助を受けられる可能性は低く、避難所でのコミュニケーションの方法についての課題が浮き彫りになった。この課題を解決するための取り組みを中心に報告したい。<BR> なお、この取り組みの実施期間は平成18年~平成19年である。4年前の取り組みであるが、雲仙普賢岳の火砕流からの復興、また今年3月に発生した東日本大震災のことも絡み、第20回大会が島原で開催される今、この取り組みが少しでも役に立つことができたらと思い発表することとした。<BR> また、この取り組みをする中で身近な地域に盲ろう者向け通訳介助者がいない問題の解決に向けて、平成22年度に2人の在住する市で「盲ろう者向け通訳介助者養成講座」を実施した。地震対策としてのネットワークづくりから始まった支援の輪は、盲ろう当事者が地域で生活しやすい環境の整備にも繋がった。このような、その後の経過も踏まえて報告したい。