著者
吉野 由美子
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.120-120, 2012

<B>【目的】</B><BR> 現在、デジタルカメラをはじめ、iPadなどのタブレット端末の性能の格段の進歩は、ロービジョン者の見る能力を助け、ロービジョン者のQOLの向上に役立つと期待されている。本稿は、筆者がスクーバダイビングツアーにおいて、実際に体験した事実を元に、iPadとデジタルカメラを組み合わせることによって、デジタル機器がロービジョン者の見る能力を格段に増すことができるという可能性を証明することを目的としている。<BR><BR><B>【方法】</B><BR> 筆者が参加した4泊5日のダイビングツアー中のブリーフィング場面、ダイビングガイドによる、筆者への小生物の説明場面や、その見せ方について観察し、撮影を行った。<BR><BR><B>【結論】</B><BR> デジタルカメラを使って、海の中の小生物を撮影し、あるいは動画に撮って、iPadに取り込み、拡大しながら細部にわたり説明するという手法は、障害のないダイバーにとっても、ロービジョン者にとっても非常に分かりやすく有効な手段である。<BR> また、ロービジョン者が自らデジタルカメラで撮影したものを、ダイビング終了後に、iPadに取り込み、拡大して細部を確認することは、その小生物を撮影できたという達成感と、その結果を自ら確認できるという点で大きな利点を持つ。<BR> このように、デジタル機器の進歩と、それらの機能を組み合わせて使用することによって、ロービジョン者が今まで見ることができないと思っていたものを見られるようになるという大きな可能性を持っている。それと同時に、その可能性を引き出すためには、見せようとするものに関する知識を持ち、ロービジョン者と共に見る楽しみを共有しようという熱意を持った支援者 (ダイビングガイド) の存在が不可欠である。<BR> また、この上記の手法は、教育現場やリハビリテーション過程に取り入れて有効に活用することが可能である。
著者
吉野 由美子 小田 浩一
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.9, pp.43, 2008

目的 本発表では事例Aがダイビングというレクリエーション活動の中で、見ることに目覚め、見る能力をもっと高めたいという欲求を持ち、実際に見えなかった海中の小生物が見えるようになっていく過程を追い、ダイビングという活動が視覚リハに役立ちその可能性を広げる存在であることを明らかにする。 方法 事例Aは年齢60歳、先天性白内障手術による両無水晶体眼、矯正視力0.2、片方に杖を持つことで歩行可能な下肢障害がある。下肢障害の原因は不明である。本稿ではAの日記、26年間700回のダイビングログ、撮影した写真などの記録を分析検討する事例研究法を使用する。 結果 事例Aは、下肢障害があり転ぶことに恐怖心を持っていた。偶然に出会ったスクーバーダイビングの無重力で転ぶ心配のない世界に魅せられていった。水中での安全確保のためのゲージのチェックや、言葉でのコミュニケーションが取れない水中でのサインの確認などのため見ることへの動機付けが強まり、見え方を改善するため情報を集め活用することによって見る能力を高めようとした。また、「見えないから興味がない」と思っていた小生物が、アフターダイビングのおり、プロジェクターで拡大され美しい姿を見ることにより「みたい」という欲求が高まった。このように見ることへの有用な刺激を受け、見ることへの欲求がさらに強まり、その結果Aは光学機器や電子エードを積極的に活用し、視覚リハに励むようになり、現在Aは、小生物の世界を見ることができるようになって来ている。 結論 ロービジョン者が見ることの楽しさを知り、見ることに意欲を持って取り組むことが視覚リハを積極的に利用し、その結果視覚活用能力を向上させることにつながって行くのである。見ることへの動機付けと見ることの楽しさを味わう舞台として、スクーバーダイビングは多くの有用な条件を持っている。また「見える」世界が広がることは、ロービジョン者のQOLの向上に多大の貢献をする。
著者
吉野 由美子 加藤 俊和 原田 敦史
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.5, 2011

東日本大震災が起こり、その規模の大きさに呆然としていた時に、ある会員の方から「協会としても何か支援活動をしないのですか」「何か役に立てませんか」と言う問い合わせをいただいたが、会員400人の協会で、財政的にも行き詰まり状態である中「何ができるのか」と考えあぐねていた時に、日盲委を中心として「対策本部」を作るので視覚リハ協会も視覚障害の専門家集団として協力して欲しいと言う申し出を受けた。<BR> この動きの中心となった加藤さんは、阪神淡路大震災の時に、被災した視覚障害者の支援にあたった経験があり、その経験から、「連携の大切さ」と「初期戦略として何をなすべきか」の見極めができているのだと言うことを知った。また、阪神淡路大震災の体験などの重要な先人の知恵が、私たち専門家に共有の財産となっていないことも分かってきた。<BR> 本シンポジュームでは、東日本大震災で被災した視覚障害者に対する支援の初期戦略と今後の見通しについてを対策本部の指揮を取っている加藤さんから伺い、また現地で実際に被災した視覚障害当事者の方に会って、その現状をつぶさに見ている原田さんからその状況を伺い、視覚障害リハビリテーションの専門家として、次にこのような災害が起こったとき「何をなすべきか」「どのような備えをしておくべきか」の知識を共有する事を第一の目的としている。<BR> また、大震災からの復興過程の中で必要とされる長期的な支援についても問題を提起することができればと考えている。
著者
吉野 由美子 別府 あかね 前川 賢一 古橋 友則
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.3, 2009

視覚障害者に対する相談窓口や歩行・日常生活訓練、便利グッズの普及などのシステムづくりを行おうとする時、県や市町村の担当者との相互理解なしでは、システムづくりは難航し、また頓挫してしまうのは明らかな事である。しかし、視覚障害者は身体障害者手帳所持者全体の約1割と数が少なく、視覚障害リハビリテーションとは何かと言うことや、どんな専門家がいるのかと言うことも、一般の人だけでなく、福祉・教育などの行政担当者にもほとんど知られていないのが現状である。<br> このシンポジウムでは、県の費用を使って研修に行き、視覚障害者生活訓練指導員の認定資格を得て高知に戻って来たが、「ニーズがない」と言う理由で、仕事に就けなかった別府さんが、どのように働きかけて行政担当者の理解を得られたか。三重県で、盲学校や市町村に職員を派遣し、視覚リハを展開している前川さんに、どのようにして盲学校や市町村と契約を結んで来たか、そして、県費で15人の視覚障害者生活訓練指導員をつくる計画を承認させた静岡の古橋さんに、なぜそのようなことが出来、現状はどうなっているのかを語っていただく事を通して、視覚障害リハビリテーションの必要性とその効果について、どのようにして行政担当者の理解を得、公的な予算を引き出すことが出来るかについて、地域のそれぞれの条件を超えた共通点を見いだし、これから地域で視覚障害リハビリテーションシステムを構築し、また専門家としてやりがいのある職場をつくって行こうとしている人達に、その方法論を学んでいただくと共に、共に共感し、相談できるつながりをつくって行くことを狙いとしている。