著者
前山 智宏 前川 清人 松本 忠夫
出版者
日本熱帯生態学会
雑誌
Tropics (ISSN:0917415X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.509-517, 2001 (Released:2009-01-31)
参考文献数
21

アカネ科アリノスダマ亜科に属するアリノスダマ類(5属88種)は,ニューギニア島を中心に分布する着生性のアリ植物であり,共生するアリ類との間に緊密な相利共生関係をもつものから共生関係の弱いものまで,様々なな共生関係を示すことが知られている。本研究では,アリノスダマ類の系統関係を明らかにした上で,その進化プロセスの推定を行うことを目的とし,アリノスダマ類4属に属する6種のク口口プラストDNA·atpB-rbcL intergene の塩基配列を決定し,分子系統樹の構築を試みた。その結果,アリとの高度な共生関係をもつMyrmecodia属やMyrmephytum属は偽系統群となり,アリとの共生関係が弱く,また乾性適応が進んだHydnophytum属が派生的分類群である可能性が示唆された。従って,アリノスダマ類の進化を考えると,多雨林で祖先型の着生性植物が,まずアリ類との共生関係を進化させ,その後一部が乾燥地へと進出し,乾燥適応型の形態を持つ種が出てきたと考察される。