著者
須藤 英一 前島 一郎
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.84-85, 2011 (Released:2011-03-03)
参考文献数
5

目的:高齢者の肺炎に関連する口腔内乾燥は日常介護でしばしば直面する問題である.この点で,保湿ジェルを用いた口腔ケアの効果を老人ホーム入所中の脳血管障害後遺症患者でみた成績を以前に報告したが,これを他の施設に広げて検討した.方法:対象は脳血管障害後遺症患者11例(男性4例,女性7例,平均年齢84.5±1.3歳).老人ホームの入居者を対象に,口腔ケア用品として,口腔内乾燥予防目的に保湿ジェルを用い,使用前年の6カ月間と使用中の6カ月間に於いて発熱を生じた日数,抗菌薬投与日数,抗菌薬投与回数,補液日数,補液回数を比較した.結果:使用前,使用中の6カ月間の発熱日数を比較検討すると使用前平均5.4±2.8日から使用中3.5±2.9日まで有意に(p<0.01)減少した.抗菌薬投与日数,抗菌薬投与回数,補液日数,補液回数はそれぞれ,使用前平均3.3±3.4日から使用中1.1±1.8日,使用前平均6.2±6.7回から使用中2.0±3.6回,使用前平均2.4±3.4日から使用中1.2±1.8日,使用前平均4.2±6.8回から使用中1.4±2.2回と全て減じたが有意差は認めなかった.結論:保湿ジェルを用いた口腔ケアは脳血管障害後遺症患者に生じる口腔内汚染を誘因とする気道感染や脱水予防に寄与できる可能性が示唆された.