著者
松原 凱男 山田 茂治 吉原 正邦 前嶋 俊壽
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1312-1316, 1987
被引用文献数
4

4-phenylr4H-1,3,4-thiadiazin-5(6H)-one[1]および5,6-dihydro-4-pheny1-4H-1,3,4-thiadiazin-5-o1[2]の<SUP>1</SUP>H-NMR,<SUP>13</SUP>C-NMR,IRおよびUVスペクトルの結果,ならびに拡張.Huckelも分子軌道計算を行ない,結合次数,電荷分布およびHOMO結合軌道の様子を求めた結果かちそれぞれの共鳴安定構造について検討した。[1]の構造は,硫黄原子から3-位窒素原子へ,また4-位窒素からカルポニル酸素へそれぞれ電荷が偏りその結果,3pπ-2pπ-2pπ 系と2pπ-2pπ-2Pπ 系と2種類の連続し喪共鳴安定構造の存在が示きれた。一方,[2]の構造は,硫黄原子から4-位窒素原子へ電荷が偏りその結果,ブタジエン型3pπ-2pπ-2pπ-2pπ 系の大きな共鳴安定構造の存在が示された。そこでこの共鳴構造の異なりが反応性にどのように影響を与えるかについて検討した。[1]は通常り求核剤,求電子剤およびラジカル試荊とはまったく反応性を示さなかった。しかし[2]は弱酸およびヨウ化メチルなどの求電子剤と容易に反応を起こし,分離困難な多くの生成物を与えた。また[2]はアルコール,アミンおよびチオールなどの求核剤とは触媒なしで容易に反応を起こし,それぞれ対応する置換化合物を与えた。このオキソおよびヒドロキシル置換基の違いだけで反応性がまったく異なった結果は共鳴講造の寄与の違いで説明され,また,[2]と求核剤との反応は,ヒドロキシル酸素と5-位炭素間の切断で生じる5,6-ジヒドロニ4H-1,3,4-チアジアジニウムカ与オン中間体を経由する機構を強く支持した。