著者
前川 素子 和田 唯奈
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.144-148, 2021 (Released:2021-09-25)
参考文献数
5

統合失調症の発症メカニズムについては,脳の発達期におけるさまざまな侵襲が発症脆弱性形成の基盤になる「神経発達障害仮説」が知られている。筆者らは特に,「妊娠中の母親が飢餓にさらされると,子どもの将来の統合失調症発症率が約2倍に高まる」という大規模疫学事象に着目し,脳発達期の栄養欠乏が成長後の統合失調症発症リスクに影響する可能性について解析を進めてきた。筆者らが,脳発達期栄養欠乏を模倣するモデルマウスを作製して解析したところ,脳発達期栄養欠乏マウスは,統合失調症様の表現型を示すこと,その上流には多価不飽和脂肪酸をリガンドとする核内受容体RXRα,PPARαが働いている可能性を見いだした。さらに,ヒトおよびマウスを対象に解析を行い,核内受容体PPARαの機能不全が統合失調症の発症リスクに関わる可能性,核内受容体PPARαが統合失調症の新しい治療ターゲットになる可能性を見いだした。
著者
前川 素子 大西 哲生 吉川 武男
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.103-107, 2012 (Released:2017-02-16)
参考文献数
31

統合失調症脆弱性形成の有力な説として,神経発達障害仮説が考えられている。神経発達障害には,環境要因と遺伝要因の両方が関わることが知られているが,特に環境要因については妊婦の栄養不良,妊婦のウィルス感染,産科合併症・周産期障害,母子間のRh血液型不適合などの関与が想定されている。本稿では母体栄養が出生後の児に及ぼす統合失調症脆弱性形成に対する影響について, DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)仮説の視点から概説したい。