著者
副島 俊典
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.294-299, 2015 (Released:2015-10-21)
参考文献数
17

放射線治療の進歩は著しいものがあり,強度変調放射線治療(IMRT)や陽子線治療などの技術が小児脳腫瘍の治療の現場にも日常の臨床として入ってきている.しかし,放射線治療の現場は照射患者の著しい増加と高精度化による精度管理のため,多忙を極めている.照射患者の増加の理由はがん患者数の増加と欧米からのエビデンスが日本の日常臨床にも広がってきたこと,薬物療法によって長期生存する患者が増加し緩和照射が増えたことによるものである.ただ,それにもかかわらず,新技術によって小児脳腫瘍の症例が恩恵を受けることも多くなってきている.その新技術についての説明をするとともに,トピックスとして上衣腫や髄芽腫の再照射について,IMRTや陽子線治療による合併症軽減の試みについて概説する.上衣腫や髄芽腫の再発は化学療法が効きにくく,治療に難渋することもある.その際に再照射することにより,長期生存する症例もあり,試みるべき治療になる可能性がある.また,IMRTの技術も進歩してきており,helical tomotherapyによってつなぎ目なく,全中枢神経照射を行うことができたり,海馬の照射線量を減らして知能障害の合併症を減ずる全脳照射が試みられている.また,陽子線治療は照射体積を狭くできるため,二次がんなどの晩期合併症を減ずることができる可能性があり,期待されている治療法である.