著者
割澤 靖子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.41-58, 2016 (Released:2016-04-11)
参考文献数
31
被引用文献数
4

本研究では, 臨床心理士指定大学院における学生の学習プロセスの個人差を捉えることを目的に, 臨床心理士指定大学院修了後3カ月以内の初学者, 計19名を対象にインタビュー調査を実施し, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ, 及び, ケース・マトリックスを援用して分析した。その結果, 『初学者の学習プロセス』は, 『知識や助言に依拠する学び』と『自身の感覚や判断に依拠する学び』を両輪として, 【1捉えどころの分からなさ】, 【2「専門家として未熟な自分」の感覚や判断の信頼できなさ】, 【3 「現時点での自分」の感覚や判断の信頼と活用】, 【4個々の気づきや学びの「つなぎの視点」の獲得】の4つのカテゴリを, 行きつ戻りつしながら進行することが明らかとなった。本研究では, この『初学者の学習プロセス』の進行状況を基準に, 調査協力者らを4つのグループに分類し, 『初学者の学習プロセス』の多様性を整理した。考察では, 初学者の教育・訓練に際して, (1) 自分で感じ考えることをサポートすること, (2)“揺れ戻りの経路”の多様性に注意すること, (3) 初学者の主体的な試行錯誤をサポートすること, (4) 学習対象の選択と限定化に注意すること, の重要性を指摘した。