著者
加川 義久 高 義礼 藤原 修
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMCJ, 環境電磁工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.107, pp.45-50, 2007-06-15
被引用文献数
1

帯電人体からの放電電流の発生機構解明を目的として,1kV以下の帯電電圧において,金属棒を握った帯電人体からの放電電流を50ΩSMAコネクタを介した6GHzディジタルオシロスコープで測定し,放電電流波形のピークと立ち上がり時間の帯電電圧依存性を調べた結果,600V以下の帯電電圧では金属棒の接近速度に拘わらず,電流ピークは帯電電圧にほぼ比例すること,電流波形の立ち上がり時間は70ps程度とほぼ一定となること,などを先に報告じた.本文では,引き続き帯電人体の指先接触で生ずる放電電流を12GHzディジタルオシロスコープで測定し,電流波形の帯電電圧依存性を明らかにした.まず,観測電圧波形と測定系に注入される放電電流波形との関係をあらわす伝達インピーダンスの測定法を示し,300kHzから18GHzまでの周波数特性を測定した結果,100MHz付近までは(50+jO)Ωとみなせるが,7GHzと15GHz付近に共振現象が現れることがわかった.しかしながら,この伝達インピーダンスからターゲットへの注入電流を推定すると,その波形は,観測電圧波形を50Ωで除した波形とほぼ一致することを確認した.つぎに,人体の指先接触で発生する放電電流を帯電電圧との関係において測定した結果,数百ボルトの帯電電圧では多重放電が頻繁に観察されるのに対して,1kVを超えると金属棒の場合と同じく1回の放電で終了する傾向がみられたこと,電流ピークは1kv程度までは帯電電圧とともに上昇するが,それ以降ではなまること,立ち上がり時間は帯電電圧と共に緩やかになること,接近速度が大きいほうが電流のピークは高く,立ち上がり時間は短いこと,などがわかった.