著者
加納 和寛 Kazuhiro Kano
出版者
同志社大学一神教学際研究センター(CISMOR)
雑誌
一神教世界 = The world of monotheistic religions (ISSN:21850380)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.49-68, 2014-03-31

第二次世界大戦後のドイツが国内外のユダヤ人・ユダヤ教に関して「贖罪」の態度を取り続けているのは言を俟たない。こうした中で、ドイツ国内のユダヤ人数は、1990年頃を境として突如急増する。これは旧ソ連に居住していたユダヤ人が流入したためであり、彼らはユダヤ人ではあるがナチスに迫害された者やその関係者とは限らない。この新しい状況のもと、ヴッパータール市バルメン地区にある、1934年にナチスに反対する第一回告白教会会議が開催され、いわゆる「バルメン宣言」が採択されたゲマルケ教会(ラインラント州教会所属)の敷地の一角に2002年、ゲマルケ教会および州教会の全面協力のもと、新たにユダヤ教のシナゴーグが建設された。このことをバルメン宣言と関連づけて評価する向きもある中で、これまでの「贖罪」モデルに加えたキリスト教とユダヤ教の新たな対話や共存の可能性について、ドイツにおける両者の社会的共存の現実を踏まえつつ、神学的および信仰的な交流の実態と理想とについて検討する。