著者
加藤 忠司 山県 真人 塚原 貞雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.17-22, 1984 (Released:2007-07-05)
参考文献数
12
被引用文献数
4 6

21年生普通ウンシュウミカン樹 (杉山系) より2~3年生枝を一年を通じて採取し, 芽, 葉, 2~3年生部位の皮質部及び木質部に分別した後, 主要な窒素成分の含有量を調べた. 多くの窒素成分が周年変化を示し, 旧器官においては発芽期(4月上中旬)に最高含有量を, 新梢の発達が終わる時期(7月)に最低含有量を示した. これに対し新生葉では最低値が9月に認められた.皮質部と木質部では70%アルコール不溶窒素成分 (主体はタンパク質) 含有量の減少に先立って全窒素及び可溶窒素の一時的増加が発芽時に認められ, 可溶成分にあっては遊離アルギニン及びプロリン, 特にアルギニンの一時的増加が顕著であった. 一方新芽では発芽に伴ってプロリン含有量の急激な減少と, アルギニンの一時的な著しい増加が認められた. これらの現象はまず遊離プロリンとアルギニンが新梢の形成に窒素源として使われ,次いでタンパク態窒素が利用されることを示唆している. 旧葉における主要窒素成分含量の減少は5月上旬に始まり, 7月までに全窒素の約16% (乾物当たり) が減少した. このうちの約40%は遊離プロリン窒素で占められた. これらすべての主要成分は全部位で秋から冬にかけて増加し, 特に皮質部及び葉におけるプロリンの増加が顕著であった.
著者
梨木 守 須山 哲男 目黒 良平 加藤 忠司
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.118-125, 1991-09-02 (Released:2009-12-17)
参考文献数
42

放牧草地におけるエゾノギシギシ植物体内の含有成分からみた問題点を明らかにするたあに, 季節ごとのエゾノギシギシの乾物消化率と含有成分 (粗蛋白質, 繊維成分, 無機成分およびNO3-N) を同一草地から採取した牧草 (トールフェスク, シロクローバ) および草地雑草 (メヒシバ, イヌビエ, ウシハコベおよびイヌタデ) と比較した。1) エゾノギシギシの消化率は他の雑草, 牧草と比べて生育ステージに関係なく低かった。このことは高消化性物質の (OCC+Oa) の低含量と低消化性物質のADLの高含量により裏付けられていた。粗蛋白質含量は6月の開花・結実期を除いてトールフェスクや他の雑草より高く推移し, 平均で28%であった。2) エゾノギシギシの無機成分はとくにK, Mgが高含量で推移し, いずれの生育ステージにおいてもトールフェスクや他の雑草と比較して高い傾向を示した。Naを除く他の無機成分の含量も高いが, 一定の傾向は認められなかった。栄養成分比のCa/P比は高く, K/(Ca+Mg) 当量比は低く, さらに反栄養成分のNO3-N は高かった。3) しかし, エゾノギシギシは家畜の嗜好性が低く消化性も低いため, 高含量の粗蛋白質や無機成分は家畜に利用されず, 草地の単位面積当たりの飼料的栄養収量の低下を招く。また, 繁茂が続けば無機成分に対する牧草との競争が強まり, 肥料成分の無効化が懸念される。さらに, 一部のミネラル比の不良や NO3-Nの高含量については, 通常家畜の利用が低いために問題化は少ないと思われるが, 飼料成分的には好ましくない。より高い栄養価の牧草生産を目的とする草地管理の立場からは, エゾノギシギシの存在はその含有成分からみても障害となる。