著者
小笠原 恵 広野 みゆき 加藤 慎吾
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.41-49, 2013 (Released:2015-02-18)
参考文献数
14
被引用文献数
5 2

本研究では、行動問題を示すことによって授業における課題従事が困難になっている自閉症児1名に対して、トークン・エコノミー法を用いて課題従事を支援し、その効果を課題従事の促進および行動問題の低減から検討することを目的とした。支援開始前、授業中の本児の要求が拒否された場合に行動問題が生起し、課題従事をせずにその場から離されるという随伴性が成立していた。本研究では、この行動問題が生起する環境に、トークン・エコノミー法を用いて課題従事すれば本児の要求が満たされるという新たな随伴性を組み込んだ。その結果、課題の従事率は80%を超えた。しかし、行動問題は半減するにとどまった。これらの結果より、本研究で用いたトークン・エコノミー法は課題従事を促進することと、一部の行動問題の低減に有効であることが示唆された。また、残存する行動問題について、経時的にその機能を分析する必要性が課題として残された。
著者
加藤 慎吾 小笠原 恵
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.283-291, 2016 (Released:2019-02-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究では、知的障害特別支援学校教員が機能的アセスメントに基づいた行動問題支援を行う際に、直面する困難について調査した。行動問題支援に関する研修に、自主的に参加した17人の教員を対象とした。研修は、講義と演習から構成された。演習では、参加者がそれぞれの学校で実際に支援をしている児童生徒を対象として、機能的アセスメントに基づた支援計画の作成、実行を行った。(1)アセスメント、(2)観察・記録、(3)支援計画の作成、(4)支援計画の実行、の各段階において難しかったことを質問紙により問い、回答を得た。質問紙は、全24項目の困難を5段階で問うリッカート尺度と自由記述法を採用した。結果として、(a)問題となる行動についての情報収集、(b)行動の記録、(c)計画の実行に関する具体的な困難が示された。知識やスキルの不足を要因とする技術的な課題と他の教員の理解や協力といった支援体制の課題が示唆された。