- 著者
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加藤 文昭
- 出版者
- 早稲田大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2007
本研究は電子スピンを有するラジカル高分子を合成、磁性電極とラジカル高分子からなる単層素子での磁気抵抗効果の発現およびそのスピン多重度との相関を見いだすこと、またラジカルを太陽電池等の有機電子デバイスへ応用する事を目的とする。本年度は、スピン量子数が2/2であるラジカル分子および非磁性金属電極からなるスピンバルブ素子を作成し、極低温磁場中での電流電圧特性評価を行った。ラジカル分子の安定な酸化還元能に着目し、色素増感太陽電池(DSSC)の電荷輸送媒体として適用、各種電気化学、光化学測定より色素還元能や電子交換反応速度を評価から、DSSC発電特性向上の指針を見いだした。以下実施した具体的実験事項を示す。1)ラジカル分子(S=2/2)によるスピンバルブ素子を作成、SQUID磁束計内にて外部磁場中での抵抗値変化測定した2)異なる反応性や酸化還元電位を有するラジカル分子(S=1/2)をDSSCの電荷輸送媒体として適用、特性を評価・比較した以上の実験から次の結果を得た。ラジカル分子を中間層、ITOおよび金を電極としたスピンバルブ素子において最大で2%の負の磁気抵抗効果を発現した。分子内スピン相互作用の有無により輸送される電子のスピン散乱過程が変化し、磁気抵抗効果が発現したものと考えられ、ラジカルによるホール輸送過程が電子スピン方向により制御・維持されることを示した。また、ラジカルを用いたDSSCでは、ラジカルの酸化還元電位と相関し開放電圧が向上した。反応性の増大にともない変換効率が向上し、DSSCの特性向上の指針を示した。