著者
石川 恭 加藤 玲香
出版者
国立大学法人愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 The journal of the Organization for the Creation and Development of Education (ISSN:21871531)
巻号頁・発行日
no.3, pp.19-25, 2013-03-31

本稿は、小学校低学年において、学習指導要領の目標を基準に、体育科の授業に伝承遊びを導入することの効果を、現代社会の子どもたちが直面している様々な問題との関わりから考察することを目的とした。また、日本古来の伝統文化である伝承遊びの意義についても考察した。これらは、今の子どもたちが抱える社会問題を解決する方策となり得る可能性をもつと思われるからである。先行研究を調べてみると、伝承遊びについては、幼児教育における伝承遊びの意義や導入、民俗学や社会学あるいは文化人類学などの分野で伝承遊びの特質や分類などが研究されている。また、日本における伝承遊びの実態などの調査研究はある。これらから、本課題について取り組む意義があるといえる。研究方法は、文献研究によった。平成20年改定の小学校学習指導要領解説・体育編と伝承遊びに関する様々な文献をもとに、学校体育、文化、遊びに関する文献などを加えて考察を行った。その結果、以下の考察に達した。学習指導要領にある改訂の基本方針と体育科の6領域について検討した結果、伝承遊びの導入がいずれにおいても可能であるといえた。体つくり運動では「けんけんずもう」、器械・器具を使っての運動遊びでは「馬のり」、走・跳の運動遊びでは「けんぱ」、水遊びではプールの中での川づくり、ゲームでは「たすけ鬼」、表現リズム遊びでは「電車ごっこ」が、学習目標に照らしてみた場合、有効であると考えられた。これらは、現代社会を生きる子どもたちが直面している様々な問題を解決する手だてとなり得る。また、伝承遊びの実践は、日本の伝統文化の保存・伝達、和の精神的価値を顧みる契機ともなる。