著者
加藤 総夫 杉村 弥恵 高橋 由香里
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.123-127, 2019 (Released:2019-09-27)
参考文献数
30

痛みは「不快な感覚的かつ情動的な体験」である.侵害受容の直接的結果として生じる痛みや慢性痛として原傷害の治癒後に訴えられる痛みのいずれも「情動」に関与する脳部位群(扁桃体,側坐核,島皮質,帯状回,前頭前皮質など)の活性化をともなう.さまざまな情動に関わる扁桃体は,慢性痛が改善しない腰痛患者での自発痛に伴う活動亢進,および,慢性痛モデル動物での腕傍核-扁桃体路を介した活性化とシナプス増強を示す.扁桃体は「身体の状態をモニターし,それに応じて脳活動を制御し,感覚・行動・内環境を最適化するハブ」であり,それが「情動」の生物学的機能であるという仮説を提唱する.
著者
加藤 総夫
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.62-64, 2020 (Released:2020-06-30)
参考文献数
16

痛みはなぜ苦しいのか? この問題に答えるためのさまざまな脳科学的なアプローチがこの15年ほどの間に進められてきた。急性痛や慢性痛に伴って活性化する脳部位は痛みネットワークを構成し,さまざまな活性化パターンや可塑性を示す。「痛み」の状態に応じて身体の反応性を制御することにより,行動を最適化して生存可能性を増加させることが痛み情動の機能である可能性を紹介する。