著者
加藤 良太
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.145-157, 2006-12

2005年11月末に始まった、小泉政権におけるODA(政府開発援助)一元化議論は、ODA政策に対するアドボカシーを行なってきた市民・NGOにとって、ODA政策形成への「市民・NGO参加」を自ら問い直す契機となった。経済財政諮問会議の決定に基づき、2005年12月から開催された「海外経済協力に関する検討会」(以下、「検討会」)では、内閣に「ODAの司令塔」となる「海外経済協力会議」を設置し、ODA実施機関であるJICA(国際協力機構)とJBIC(国際協力銀行)の一部を統合、一元化することが決定されたが、市民・NGOはこのプロセスに公式に参加することができなかったのである。 市民・NGOはこれに抗議し、検討会への働きかけや提言、報道関係者や国会議員などとの連携を通じて、市民・NGOの意見がODA一元化議論に反映されるよう取り組んだものの、結果的には、市民・NGOの意見が十分に反映されず、国益志向の強いODAの流れを後押しする報告が検討会から出される結果となった。一方で、ODAの話題が報道で広く取り上げられたこと、報道関係者や国会議員との新たなつながりなど、市民・NGO参加の今後に資する成果も残された。 こうした結果を受け、今後の新たなODA政策形成の枠組みの動向を見極めながら、市民・NGOとして、新たな参加のあり方を模索していくことが必要である。