著者
加藤 麻由美
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.77-91, 2003-01-10

多文化主義は当初多民族国家カナダにおいて社会統合のための政策として採用され、その後オーストラリア、西ヨーロッパ、アメリカ合衆国などへ普及していった。しかしながら、多文化主義は文化的差異の間の新しい均衡を目指しているために、社会分裂の危険性や西欧文化の否定につながるというパラドックスに悩まされることになる。反多文化主義派は、これまで特権的な地位を占めていた西欧文化の優位性が失われるのではないかとの脅威を感じている。本稿ではグローバル社会の現在、民主主義思想から生まれてきた新たな社会統合原理としての多文化主義の可能性と問題点について概説し、多文化主義の限界を乗り越え、その可能性をより発展させる戦略としてディアスポラおよびハイブリディティ概念の活用を提案する。