著者
加賀谷 祐太
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
巻号頁・発行日
pp.168, 2013 (Released:2014-02-14)

トガリネズミ属(Sorex属)は,温帯・亜寒帯・寒帯の森林や草原に広く分布する小型哺乳類である.北海道には,専ら地表で活動を行うヒメトガリネズミ( S. gracillimus)およびバイカルトガリネズミ (S. caecutiens),地表および地中の双方で活動するオオアシトガリネズミ(S. unguiculatus),そして希少種トウキョウトガリネズミ(S. minutissimus)の 4種が生息している.腐植層の発達の程度は,トガリネズミ類の餌資源(地上徘徊性昆虫類およびミミズ類)の量に大きな影響を与えると考えられ,地表性のヒメトガリネズミ・バイカルトガリネズミ,および半地下性のオオアシトガリネズミの分布を決定づける重要な要因であると考えられる. そこで本研究では,土壌環境(腐植層の厚さ),節足動物資源量,ミミズ資源量の三つの要因に着目し,これらが地表性ヒメトガリネズミおよび半地下性オオアシトガリネズミの分布に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.北海道鹿追町大雪山国立公園内において,2012年の 6月~ 8月に 20か所の調査区を徐々に標高を違えて設定し,各調査区において,トガリネズミ 2種の個体数調査,土壌環境調査(O層および A層の厚さを計測),節足動物資源量調査,ミミズ資源量調査を実施した.今回の発表では,生態的ニッチが異なるヒメトガリネズミおよびオオアシトガリネズミが,これらの要因にどのような影響を受けているのかについて比較議論する.