著者
加賀谷 駿 荒井 幸代
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.12, pp.3000-3008, 2013-12-01

新たなエネルギー供給と消費の形態として注目されているマイクログリッドは,既存の電力系統からの送電に極力依存せずに,エネルギー供給源と消費施設をもつ小規模なエネルギーネットワークである.供給が不安定な自然エネルギー活用を前提とするため,グリッド内での電圧均衡を実現し,逆潮流による大停電を回避する必要がある.そこで本研究では,マイクログリッドを,複数のエージェントからなるネットワークとしてモデル化し,需給の不安定をエージェント間での電力融通によって吸収することを考える.具体的には,太陽光発電をもつ需要家エージェントの強化学習モデルを提案する.エージェントは,太陽光発電・定常発電・電力需要・需要制御・蓄電の五つのモジュールから構成され,不安定要素である太陽光発電と電力需要の二つを需要制御と蓄電によって安定化する.需要制御に用いる強化学習には,連続値をとる電力制御問題に対応するために,Actor-Criticとタイルコーティングを導入する.実験では,5体のエージェントからなる完全グラフにおいて需給の安定化が学習できることをシミュレーションで示し,電力融通における提案モデルの有効性を示す.