著者
加野 まきみ ゴーベル ピーター
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.47-61, 2019-07-31

授業内で少人数グループに分かれて複数のプレゼンテーションが平行して行われることは,特に大人数の授業では,一般的になってきている。この種のプレゼンテーションにはピア(=クラスメイト)による相互評価が必要で,またそれは聞き手学生のプレゼンテーションへの関わりを積極的なものにする働きも持っている。従来の紙ベースの評価表や学習支援システム(LMS)による相互評価はいくつかの問題点を抱えていた。例えば,紙ベースの評価表からの入力・集計処理などの煩雑さ,学生がピアを厳正に評価し,批判的なコメントをするのを控える傾向,匿名性の欠如などがあり,これらは評価の信頼性やコメントの有用性に大きな影響を及ぼすものである。PeerEvalシステムはこのような問題点を克服するために開発された。PeerEvalは学生が匿名性を保ちながら,その場で,あらかじめ設定された評価基準を用いたり,コメントを書いたりして,ピアのプレゼンテーションを評価するアプリである。相互評価の結果はデータベースに集計され,プレゼンテーション後,即座に教員と学生がアクセスできる。この即時性により,学生のその後のプレゼンテーションの向上に役立てることができると期待される。本稿は本学文化学部の英語を使用してプレゼンテーションを行う授業で,紙ベースの評価表とPeerEvalを用いた相互評価を実施し,学生のこのアプリに対する意識を調査した。12項目からなるアンケートを実施し,アプリの使い勝手や,発表者の立場と聞き手の立場のそれぞれから,紙ベースの評価表とPeerEvalを用いた相互評価の利点・欠点を探った。学生の相互評価システムに対する考え,フィードバックの質,即時性やコメントの有用性などに関する調査結果を述べる。モバイル相互評価システムのさらなる活用の可能性についても論じる。
著者
加野 まきみ ゴーベル ピーター Makimi KANO Peter GOBEL 京都産業大学文化学部 京都産業大学文化学部
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-11, 2012-07

本稿では,本学文化学部における初年次必修英語科目内で一年を通して行ったRWL(聞きながら読む)学習プログラムの計画・実施からその有効性の検証までを概説する。230名の文化学部1年次生がこのプログラムに参加した。この学習法は,英語学習者が個々の単語に注目するのをやめて,より大きな単位でテクストを理解し,まとまった長さの英文を聞けるようになるために開発された。大量の英文を聞くというのは日本人英語学習者の大部分に欠けている練習である。学習者の英語運用レベルにかかわらずこのプログラムに参加できるよう,CD付きのグレーディッド・リーダーを使用した。本プログラムを支える理論や実践,学生の学習記録の保存・管理に役立つMoodleReaderの機能を紹介し,運営上の問題点についても述べる。プログラムの有効性を検証した結果,RWLの学習量はリーディング・スピードや語彙認識の向上に寄与することを示している。 This manuscript describes the results of a year-long Reading While Listening(RWL)program run for university first-year English students at Kyoto Sangyo University. A total of 230 ESL learners participated in the program. The program was developed to help L2 readers shift attention from individual words to the syntax and semantics of the written text, and to give students practice in listening to spoken English at length- a practice that the majority of Japanese students lack. To make the program accessible to low-level learners, graded readers with accompanying CDs were used. The theory and practice of program, and the Moodle module that keeps records of student progress(MoodleReader)are described, along with some of the administrative and logistical problems encountered. The results of the program suggest that the amount of RWL had a significant and positive effect on both reading speed and vocabulary recognition.