著者
山本 啓二 Keiji Yamamoto 京都産業大学文化学部
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
no.10, pp.49-57, 2015-07

11世紀のカイロで医者として活躍したアリー・イブン・リドワーンは,プトレマイオスによる占星術書『テトラビブロス』に対してアラビア語で全文註解を施している。この『テトラビブロス註解』は13世紀にラテン語に翻訳され,さらに15世紀には印刷され,広くラテン世界にも知られるようになった。アリーはその註解を書く際に,フナイン・イブン・イスハークによるアラビア語版を用いていた。筆者は現在フナイン版テキストの校訂版を準備しているが,その場合に,13世紀以降のものしか残っていないフナイン版の写本以外に,11世紀にアリーによって註解書に引用されたフナインのテキストも参照すべきであることを認識するに至った。
著者
井尻 香代子
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
no.16, pp.131-137, 2021-07-30

スペインやラテンアメリカでは,近年,俳句のみならず,連句,川柳,俳文,俳画など,俳文学の受容が進んでいる。本稿は,日本の俳文学がなぜスペイン語圏の一般の人々に広く実作されるに至ったのか,解明への端緒を開くことを目的としている。ここではスペイン語圏の俳文学ジャンルの実作状況を踏まえ,日本とスペイン語圏の俳文学ジャンルの定義の比較分析を行った。その結果,形式,テーマ,文体において共通点が見出された。スペイン語圏の人々は,その生活に根差した感性の表現を伝統的な口承文学に見出してきたが,現在はその新しい詩学を日本の俳諧の精神・美学に求めていると思われる。
著者
渡邉 泰彦
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-30, 2018-07-31

ドイツでは,2017年10月1日から同性婚が導入された。同性カップルは2001年から登録パートナーシップを行うことができたが,保守政党(CDU/CSU)とメルケル首相は,同性婚を拒絶していた。6月中旬まで,同性婚法が国会で可決される展望はなかった。その状況は,1週間で急激に変化した。 本稿では,急激な変化の背景を,新聞,雑誌,連邦議会議事録における政治家の発言から明らかにした。
著者
島 憲男
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.25-48, 2021-07-30

本論考では,対格目的語が文の主要な文肢(項)として含まれているドイツ語の3 構文(結果構文・Resultative Konstruktionen,結果挙述の目的語・Ergebnisobjekte,同族目的語・Kognate Objekte)を取り上げ,これまでの構文研究の個別成果に基づき異なる構文間の共通性・関連性を横断的に捉えることを目的とする。今回の構文横断的な分析は,より一般的なメカニズムから個別の構文やドイツ語文法の全体像を捉え直すという試みであり,個別の構文研究の際には意識されにくい構文間の共通性や関連性,差異などの関係性を捉えようとする試みでもある。
著者
須藤 瑞代
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
no.16, pp.147-153, 2021-07-30

本研究は,1930 ~ 40 年代において,悪化する日中関係から距離をとり,改善の道を探ろうとする女性たちの動きについて,その意義と限界を考察することを目的とする。特に,東京朝日新聞社における初の女性記者・竹中繁と,彼女が中心となって組織した「月曜クラブ」と「一土会」に着目する。「月曜クラブ」は日本の女性知識人たちの勉強会で,そのメンバーの中から中国に対する理解を深めようという声が上がり「一土会」が作られた。「一土会」では,日中関係改善を女性によって成し遂げようとする意識が醸成され,地道な活動が行われた。今年度は特にこの「月曜クラブ」「一土会」についての基礎的な研究を進めた。
著者
勝矢 淳雄
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
no.4, pp.55-66, 2006-07

平安京より古く1300年以上の伝統がある上賀茂地域は京都の北に位置し,烏相撲,紅葉音頭,さんやれ祭,やすらい花など多くの文化的行事なども伝承されてきている。昭和63年には国の重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)に選定された社家屋敷群も維持され,町並み保存がはかられている。しかし,地域の環境や地域に伝わる文化の保全・継承の努力の一方で,地域共同体の弱体化によって文化的事象の維持が徐々に失われる危機にあるのも事実である。平成13年以来,伝統文化の保全・継承のために子供たちの社家屋敷の見学会をはじめたが,ようやく地元に定着させる一定の目処がついた。その他の活動も順次進める中で,地元の雰囲気も好意的な方向に変化してきた。平成17年度は,地元との信頼関係が形づくられてきたことを受け,新たに上賀茂探検クラブとテントウムシの観察会,上賀茂神社と七夕祭,自治連合会をはじめとする地元諸団体と賀茂季鷹歌碑建立計画,上賀茂町並み保存会などと上賀茂文化フォーラムの開催,神社などと二葉葵の森の復活事業などを手がけた。いずれも地元と良好な関係のもとに進展し,さらに行事の形態をバイオリージョナリズムの理念に基づき徐々に地元住民が地元のために行う活動へと転換できるようになってきた。
著者
渡邉 泰彦
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
no.13, pp.1-30, 2018-07

ドイツでは,2017年10月1日から同性婚が導入された。同性カップルは2001年から登録パートナーシップを行うことができたが,保守政党(CDU/CSU)とメルケル首相は,同性婚を拒絶していた。6月中旬まで,同性婚法が国会で可決される展望はなかった。その状況は,1週間で急激に変化した。 本稿では,急激な変化の背景を,新聞,雑誌,連邦議会議事録における政治家の発言から明らかにした。1 はじめに2 同性の人のために婚姻締結の権利を導入する法律3 2017年4月までの状況4 2017年6月5 連邦議会採決6 抽象的規範統制の申立て7 連邦議会選挙8 同性婚の締結数9 おわりに
著者
池田 智美
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.75-88, 2019-07-31

本稿では,スポーツ留学生のライフストーリーを分析し,進路選択や学修への動機づけについて考察を行った。その結果,どのような動機づけがみられ,それらがどのように複雑に結びついているかが明らかになった。また,経験を通した他者との相互作用の過程において,アイデンティティを形成させ,自己実現への動機づけとして成長させていることもわかった。
著者
加野 まきみ ゴーベル ピーター
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.47-61, 2019-07-31

授業内で少人数グループに分かれて複数のプレゼンテーションが平行して行われることは,特に大人数の授業では,一般的になってきている。この種のプレゼンテーションにはピア(=クラスメイト)による相互評価が必要で,またそれは聞き手学生のプレゼンテーションへの関わりを積極的なものにする働きも持っている。従来の紙ベースの評価表や学習支援システム(LMS)による相互評価はいくつかの問題点を抱えていた。例えば,紙ベースの評価表からの入力・集計処理などの煩雑さ,学生がピアを厳正に評価し,批判的なコメントをするのを控える傾向,匿名性の欠如などがあり,これらは評価の信頼性やコメントの有用性に大きな影響を及ぼすものである。PeerEvalシステムはこのような問題点を克服するために開発された。PeerEvalは学生が匿名性を保ちながら,その場で,あらかじめ設定された評価基準を用いたり,コメントを書いたりして,ピアのプレゼンテーションを評価するアプリである。相互評価の結果はデータベースに集計され,プレゼンテーション後,即座に教員と学生がアクセスできる。この即時性により,学生のその後のプレゼンテーションの向上に役立てることができると期待される。本稿は本学文化学部の英語を使用してプレゼンテーションを行う授業で,紙ベースの評価表とPeerEvalを用いた相互評価を実施し,学生のこのアプリに対する意識を調査した。12項目からなるアンケートを実施し,アプリの使い勝手や,発表者の立場と聞き手の立場のそれぞれから,紙ベースの評価表とPeerEvalを用いた相互評価の利点・欠点を探った。学生の相互評価システムに対する考え,フィードバックの質,即時性やコメントの有用性などに関する調査結果を述べる。モバイル相互評価システムのさらなる活用の可能性についても論じる。
著者
加野 まきみ ゴーベル ピーター Makimi KANO Peter GOBEL 京都産業大学文化学部 京都産業大学文化学部
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-11, 2012-07

本稿では,本学文化学部における初年次必修英語科目内で一年を通して行ったRWL(聞きながら読む)学習プログラムの計画・実施からその有効性の検証までを概説する。230名の文化学部1年次生がこのプログラムに参加した。この学習法は,英語学習者が個々の単語に注目するのをやめて,より大きな単位でテクストを理解し,まとまった長さの英文を聞けるようになるために開発された。大量の英文を聞くというのは日本人英語学習者の大部分に欠けている練習である。学習者の英語運用レベルにかかわらずこのプログラムに参加できるよう,CD付きのグレーディッド・リーダーを使用した。本プログラムを支える理論や実践,学生の学習記録の保存・管理に役立つMoodleReaderの機能を紹介し,運営上の問題点についても述べる。プログラムの有効性を検証した結果,RWLの学習量はリーディング・スピードや語彙認識の向上に寄与することを示している。 This manuscript describes the results of a year-long Reading While Listening(RWL)program run for university first-year English students at Kyoto Sangyo University. A total of 230 ESL learners participated in the program. The program was developed to help L2 readers shift attention from individual words to the syntax and semantics of the written text, and to give students practice in listening to spoken English at length- a practice that the majority of Japanese students lack. To make the program accessible to low-level learners, graded readers with accompanying CDs were used. The theory and practice of program, and the Moodle module that keeps records of student progress(MoodleReader)are described, along with some of the administrative and logistical problems encountered. The results of the program suggest that the amount of RWL had a significant and positive effect on both reading speed and vocabulary recognition.
著者
大木 裕子 Yuko OKI 京都産業大学経営学部
出版者
京都産業大学総合学術研究所
雑誌
京都産業大学総合学術研究所所報 (ISSN:13488465)
巻号頁・発行日
no.9, pp.119-142, 2014-07

はじめに1.バレエ・リュスの活動 第1期「エキゾティシズムとプリミティヴィズムの時代」(1909-1914年)2.バレエ・リュスの活動 第2期「モダニズムとの結合の時代」(1915-1920年)3.バレエ・リュスの活動 第3期「アヴァンギャルドの実験と狂騒の時代」(1921-1929年)おわりに資料 バレエ・リュス初演年表