著者
加香 芳孝 青木 孝良
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

豚の脳通電失神と殺法(電殺法)と,炭酸ガス麻酔失神と殺法(ガス麻酔と殺法)とによる,と殺豚肉の肉質を比較することを目的とし,まずと殺前の失神法のストレス負荷の差を比較するため,ストレスホルモン,アドレナリンの放血血液中濃度を指標として比較したところ,一見ストレス負荷が少ないと思われる炭酸ガス麻酔の方が同ホルモン濃度が高かったので,ラットを用い基礎実験した結果,豚を麻酔室へ追込むために使用される電気ムチの影響で高いことが明らかとなった.しかし,ガス麻酔と殺法ではストレス負荷が大きいにも拘らず,異常内PSEの発生率が0〜4%以下であるという事実との矛盾を解明するため,血液と筋肉の両者について両法でと殺した豚について検討した結果,次の諸点が明らかとなり,上記の矛盾の原因も解明された.(1)放血血液のpHは電殺法では7.45±0.067(n=50)であるが,ガス麻酔と殺法では7.00±0.096(n=21)であり,炭酸ガス吸入に起因するアシド-ジスの結果,脳循環血液pHの急激な低下によって脳の機能麻痺による失神状態の出現が推定された.(2)胸最長筋についてと殺後30分以降48時間までのpHの経時的変化を測定比較したところ,電殺豚(n=10)では30分後の6.42から徐々に低下し20時間後に5.84となり,以後やや上昇して6.09となる変化を示したのに対して,ガス麻酔と殺豚(n=10)では頭初から低く30分後の5.74から殆ど変化無く48時間後も5.78であった点は対象的であり,しかも従来PSE発生原因はと殺後1時間以内のpHの急激な低下にあるとされていたが,ガス麻酔と殺豚ではPSE発生は皆無であった.(3)ストレス負荷が大きいにも拘らず,PSEが発生しない原因追及のためアドレナリンが筋肉細胞に作用する際の二次メッセンジャ-として働くcAMPの生成量を比較したところ,電殺豚では極めて高いのに対してガス麻酔と殺豚では顕著に低い(-50%)ことを世果に先駆けて発見したが,その原因はアデニル酸シクラ-ゼ活性が筋肉の低pHのために低下することに起因すると推定した.