著者
矢田 智 矢沢 直樹 山田 義和 助川 しのぶ 高木 弦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.4, pp.641-647, 1989-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
23
被引用文献数
4

白金族金属触媒による 4-t-ブチルシクロヘキサノン (1) の還元アミノ化反応と立体化学について検討した。反応生成物は第一級アミンの 4-t-ブチルシクロヘキシルアミン (2) と第二級アミンのビス (4-t-ブチルシクロヘキシル) アミン (3) などであった。(2) の生成は Pt<Os<h<Pd<Rh<Ruの順で収率59~97%の間であった。(3)はPtでは収率34%に対し, Ruではまったく生成しなかった。触媒によって(2)と(3)の生成量は異なる。これは反応中, 一時的に生成する4-t-ブチルシクロヘキサンイミン(6)やシップ塩基, 4-t-ブチル-N-(4-t-ブチルシクロヘキシリデン) シクロヘキシクルアミン(5)に対する水素付加の速度の違いと(5)の反応性の違いによる。たとえば, 別途に合成した(5)を用いてRu上, アンモニア存在下での水素付加反応では1分子の(5)から2分子の(2)が定量的に生成し, (3)は得られない。しかし, Ptではこ(5)から(2)と(3)が同時に得られた。(1)の還元アミノ化における立体化学ではいずれの触媒とも(2)のtrans-体よりも cis-体を多く生成した。また, (5)の立体構造を1H-NMRによって調べ, C-N結合がアキシアル(ax)結合とエクアトリアル(eq)結合をもつ2種類の立体異性体の存在を確認した。さらに(5)が水素付加されて得られた(3)では C-N-C 結合が ax-ax, ax-eq, eq-eq 結合した3種類の立体異性体が存在した。