著者
矢田 智 高木 弦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.1, pp.20-24, 1991-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
5

8族金属触媒によるメントン1とその異性体であるイソメントン2の還元アミノ化反応の選択性と立体化学について検討した。1の反応生成物は第一級アミン異性体のネオメンチルアミン4,メンチルアミン5とネオイソメンチルアミン6であった。第一級アミン異性体の生成率は5%Pd-C>5%Ru-C≧5%Rh-C>5%Pt-C>Raney-Co>Raney-Niの順で収率24~84%の問であった。5%Pd-C触媒では3種類の第一級アミン異性体中,4が45%の収率で最も多く生成したのに対し,5%Ru-C触媒では6が41%の収率で最も多く生成した。このように,触媒による第一級アミン異性体の生成物分布の違いは反応中間体のP-メンタン-3-イミン3と3のエナミン形,3-P-メンテン-3-アミン10との間でエナミン形-ケチミン形互変異性化が生じ,これらに対する水素付加速度の違いによって説明した。また,1や2の反応ではまったく第二級アミンや第三級アミンの生成は認められず,その原因を1,2や3の官能基に対する置換イソプロピル基の立体障害によって説明した。一方,2の還元アミノ化反応では1にくらべて反応が進みにくい。しかし,2の反応によって得られた第一級アミンの生成物分布は1の反応の結果と似ている。2の反応では2が1に異性化して反応が進行したことを示唆した。
著者
矢田 智 矢沢 直樹 山田 義和 助川 しのぶ 高木 弦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.4, pp.641-647, 1989-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
23
被引用文献数
4

白金族金属触媒による 4-t-ブチルシクロヘキサノン (1) の還元アミノ化反応と立体化学について検討した。反応生成物は第一級アミンの 4-t-ブチルシクロヘキシルアミン (2) と第二級アミンのビス (4-t-ブチルシクロヘキシル) アミン (3) などであった。(2) の生成は Pt<Os<h<Pd<Rh<Ruの順で収率59~97%の間であった。(3)はPtでは収率34%に対し, Ruではまったく生成しなかった。触媒によって(2)と(3)の生成量は異なる。これは反応中, 一時的に生成する4-t-ブチルシクロヘキサンイミン(6)やシップ塩基, 4-t-ブチル-N-(4-t-ブチルシクロヘキシリデン) シクロヘキシクルアミン(5)に対する水素付加の速度の違いと(5)の反応性の違いによる。たとえば, 別途に合成した(5)を用いてRu上, アンモニア存在下での水素付加反応では1分子の(5)から2分子の(2)が定量的に生成し, (3)は得られない。しかし, Ptではこ(5)から(2)と(3)が同時に得られた。(1)の還元アミノ化における立体化学ではいずれの触媒とも(2)のtrans-体よりも cis-体を多く生成した。また, (5)の立体構造を1H-NMRによって調べ, C-N結合がアキシアル(ax)結合とエクアトリアル(eq)結合をもつ2種類の立体異性体の存在を確認した。さらに(5)が水素付加されて得られた(3)では C-N-C 結合が ax-ax, ax-eq, eq-eq 結合した3種類の立体異性体が存在した。