著者
水門 善之 勇 大地
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学
巻号頁・発行日
vol.10, pp.S5-S8, 2017

<p>日本銀行は,金融政策決定会合にて金融政策の方針を決定する.決定会合の後には日銀総裁が会見を行い,金融政策運営に関する説明を行うが,2014年度以降,日銀はメディアを通じた会見の動画配信を解禁した.本研究では,深層学習(ディープラーニング)等の人工知能技術を用いた表情認識アルゴリズムを用いて,会見での総裁の表情の変化を,「喜び」・「怒り」・「悲しみ」・「驚き」・「恐怖」等の感情ごとに指数化し,それらの変化を見ることで,金融政策への示唆を得ることを試みた.その結果,重大な金融政策変更を行う直前の回の会見では,「怒り」や「嫌悪」の値が高くなる一方,金融政策変更後の会見では,「悲しみ」の数値が低下する傾向が確認された.このことは,政策変更前の金融政策に対する問題意識の高まりと,金融政策変更によって,それが緩和されることによる安堵が,表情に表れている可能性を示していると考えられる.</p>