著者
水門 善之 勇 大地
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学
巻号頁・発行日
vol.10, pp.S5-S8, 2017

<p>日本銀行は,金融政策決定会合にて金融政策の方針を決定する.決定会合の後には日銀総裁が会見を行い,金融政策運営に関する説明を行うが,2014年度以降,日銀はメディアを通じた会見の動画配信を解禁した.本研究では,深層学習(ディープラーニング)等の人工知能技術を用いた表情認識アルゴリズムを用いて,会見での総裁の表情の変化を,「喜び」・「怒り」・「悲しみ」・「驚き」・「恐怖」等の感情ごとに指数化し,それらの変化を見ることで,金融政策への示唆を得ることを試みた.その結果,重大な金融政策変更を行う直前の回の会見では,「怒り」や「嫌悪」の値が高くなる一方,金融政策変更後の会見では,「悲しみ」の数値が低下する傾向が確認された.このことは,政策変更前の金融政策に対する問題意識の高まりと,金融政策変更によって,それが緩和されることによる安堵が,表情に表れている可能性を示していると考えられる.</p>
著者
水門 善之 田邊 洋人
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.FIN-029, pp.09-13, 2022-10-08 (Released:2022-10-01)

日本における製造業の基調的な生産動向を捉える上で,自動車工業の生産量を把握することは有用である.本研究では,携帯電話端末の位置情報(GPS 情報)を用いて計測した,自動車メーカーの生産拠点における時間帯ごとの滞在人数を基に,自動車生産量のナウキャスティング(即時性の高い推計)を行った.更に本研究では,同情報が示す自動車メーカー各社の生産状況の趨勢に基づいて株式投資戦略を構築した場合,堅調なリターンが得られることを確認した.また,比較検証のため,各社の株価の趨勢(モメンタム情報)に基づいて同戦略を構築した場合には,安定的なリターンは得られなかった.これらの検証結果は,株式投資において,携帯電話の位置情報に基づく即時性の高い生産量推計の有効性を示す内容と言えよう.
著者
水門 善之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.390-396, 2022-10-01 (Released:2022-10-01)

昨今,経済分析において,従来の経済統計を補完する形で,様々なデータを活用する流れが進んでいる。これらはオルタナティブデータと呼ばれ,高頻度の売上データや物流データ,携帯電話のGPSデータやクレジットカードの決済データ,更にはインターネット上のテキストデータや経済活動を物理的に観測した画像等のような非構造化データまで多岐にわたるオルタナティブデータを使用するメリットは,その情報の豊富さに加え,速報性の高さも挙げられる。本稿では,日本経済を対象として,これまで著者らが行ってきた,製造業の生産活動や家計部門の消費行動に関する各種オルタナティブデータを用いた研究を紹介する。
著者
水門 善之 田邊 洋人
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.37-2_D-LB2, 2022-03-01 (Released:2022-03-01)
参考文献数
12

In recent years, the importance of responding to climate change has increased, and various countries have set greenhouse gas emission reduction targets centered on CO₂ (Carbon Dioxide). In this study, we analyzed the relationship between macroeconomic activity and CO₂ emissions amid growing discussions on CO₂ emissions. Recently, while the positive correlation between GDP and CO₂ emissions on a level basis, which had been confirmed in the past, is collapsing mainly in Europe and the United States. However, it this research, we converted the GDP and CO₂ emissions data to a yearly change rate in order to mitigate the effects of structural environmental changes and we confirmed that a positive correlation was maintained between emissions and economic growth rate. Then, in this research, in order to immediately grasp the CO₂ emission status, we used the CO₂ concentration data which was measured using the observation information from artificial satellites (GOSAT, Greenhouse gases Observing SATellite). We proposed an effective method for grasping the macroeconomic situation in real time. In addition, in the proposed method, the estimation accuracy of the economic model was improved by using fine-grained satellite information as a feature quantity.
著者
水門 善之 内山 朋規
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Special_issue, pp.S49-S52, 2019 (Released:2020-03-17)
参考文献数
5

本研究では,金融市場で取引されるインフレーションスワップ(以下,インフレスワップ)のレートに注目することで,市場参加者の“インフレ期待(インフレ予想,Inflation Expectations)”の計測を行った.日本では,2019年10月に消費税率の8%から10%への引き上げが予定されていることから,現在(2019年7月),金融市場で織り込まれているインフレ期待には,消費増税の影響が反映されている.この点を踏まえ,本研究では,増税の織り込みの影響を除去することで,インフレ期待部分の抽出を行った.加えて,インフレ期待の形成過程を考察するため,市場のインフレ期待と連動性の高いQUICK短観のインフレ期待(見通し)の,調査データを用いて期待の頻度分布の検証を行った.結果,平均値として定義される人々の期待インフレ率の変化を主導していたのは,インフレ期待の分布において,相対的に高いインフレ期待を抱いていた層であることが確認された.