著者
勝山 恒男 安家 武 野村 祐士 若本 雅晶 野島 聡 木下 和彦 村上 孝三
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.1810-1822, 2009-08-15

IPスイッチの処理能力向上にともない,レイヤ2ネットワーク規模が拡大し,経済的に大規模なレイヤ2ネットワークの構築が可能となってきている.これにともない,障害の波及範囲も広域化し,障害復旧に時間を要し,可用性を低下させる要因となっている.レイヤ2ネットワークの典型的な大規模障害であるループ障害では,ループパケットは,消滅することなくネットワーク内を転送し続ける現象が起き,システム全体の稼働停止に至ることがよく知られている.この現象は,本来バス構造であったLANセグメントをスタートポロジにしたが,ブロードキャスト型のプロトコルを変えていないために起きる本質的問題である.これを回避する従来技術としてSTP(Spanning Tree Protocol)が適用されているが,十分な効果が得られない場合も多い.そこで,本論文では,ループ障害を対象に,従来の障害事前防止型のアプローチではなく,その原因箇所をリモートホストから迅速に探索発見する診断型のアプローチを提案する.本方式は,第1ステップとして,診断探索を行う端末から送信するロングパケットによってノード負荷の低減を行い,また,架空MACアドレスからのブロードキャストARP要求の送信によってMACアドレス誤学習を訂正し,本来の通信機能の回復を行う.次いで,第2ステップとして,誤学習の成否と大量パケット受信ポートの分析によってループ箇所の特定を行う2ステッププロセスからなるリモート診断を特徴としている.