著者
勝田 和學
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.64-76, 1986

萩原朔太郎は大正二年に詩人としてデビューした。その時、北原白秋が大きな影響を与えたと考えられるが、従来の研究では、その過程と意義が必ずしも明確にされなかった。本稿は、白秋の歌集『桐の花』の「哀傷篇」に着目し、そこに描かれた人妻との恋とその罪に苦悩する作者の赤裸々な姿に感動した朔太郎が、それを契機に詩集『思ひ出』を再評価し、詩とは幼児の如き純真さで真実を捉えるものという詩観を確立したことを明らかにし、そこに白秋の影響の最大の意義を見ようとするものである。
著者
勝田 和學
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.1-15, 1987-04-10 (Released:2017-08-01)

白秋・露風の二派対立と神秘主義をめぐって展開されていた詩壇論争の渦中で発表された『月に吠える』自序は、その詩の神秘性についての見解に絡んで、福士幸次郎や白鳥省吾らの意外な反応と批判を招いた。そこには誤解もあったが、朔太郎の内部矛盾を鋭く衝いてもいた。複雑な様相を呈する朔太郎の<神秘思想>の内実を特にウイリアム・ブレークとドストエフスキイ受容との関連において解明しながら、その意義について考察する。