- 著者
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勝田 春子
- 出版者
- 文化女子大学研究紀要編集委員会
- 雑誌
- 研究紀要 (ISSN:02868059)
- 巻号頁・発行日
- no.21, pp.231-241, 1990-01-31
第1報に続いて,今回の「箸」の考察は,室町時代から江戸時代に至る推移を見極めるのが目的だが,以下その概要について述べてみたいと思う。毎年,慣例行事として, 8月4日には,東京山王日枝神社1)で「ハシの日」として,日頃使用した箸への礼をこめて焼き供養し箸に関心のある人々が多数集って感謝するという箸供養祭2)が行なわれている。時代とともに,食生活多様化がみられているが,日本人の食事にとって,箸は切り離すことが出来ない食事用具のひとつとなっている。単純な二本の棒状のものであるが,周知のように箸は食事用として,さらに食事以外の使用法として,いつ頃から使用され,かつどのような経過をたどってきたのだろうか。それぞれの民族によってさまざまな食事用具の使用をみることが出来るが,火を使うことにより,その熱さを防ぐために,また食物をつまむうえで,いろいろな方法が生み出されて,今日まで伝承されつづけている。箸については,古今東西多くの研究がなされているが,今後「箸」に関する研究をすすめていくうえで,歴史的変遷はその出発点となるものである。日本の食文化から箸を知るうえで,世界の食事方法,箸の発生,起源,語源,単位ならびに弥生時代から鎌倉時代までの1000年の変遷が考察できた。鎌倉時代には,箸の使い方(はさむ,つまむ,ほぐす,切るなど)も多機能となり,その目ざましい発達が,室町時代以降食生活といかにかかわりをもってきたのか,考察を続けた。