著者
尾崎 麻子 北原 絹代
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.31, 2012

【目的】<BR>住民主導の地域づくりは介護予防事業の重要な視点であり、事業推進において住民ボランティアを育成、活用することが求められている。前橋市では介護予防サポーター(以下、サポーター)と名付けたボランティアの養成をしている。本研究の目的は、サポーター活動を5年間継続している女性へのインタビュー内容からサポーターへの参加及び継続のプロセスを明らかにすることである。<BR>【方法】<BR>サポーター活動を5年間継続している60歳代の女性1名を対象にサポーター参加前から現在の生活について半構成インタビューを実施し逐語録を作成した。その内容を修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(以下、M-GTA)を用いて分析した。本研究は介護予防事業主管課の了承を得たうえで「疫学研究に関する倫理指針」を遵守して実施した。対象者には本研究への参加について書面と口頭にて説明し、同意を得た。<BR>【結果】<BR>分析結果から4つのカテゴリーが生成された。サポーター活動を継続している女性は、サポーター参加前に[感謝される体験]や[市の事業という意識]を持っており、サポーターとしての経験の中で[他者との交流から得る感動][地域のサポーターとしての自覚]というプロセスを経て現在に至っていた。<BR>【考察】<BR>[市の事業という意識]から参加へのきっかけになったのは市の事業である安心感や民生委員等の市からの委嘱を受けている者特有の使命感であると思われた。<BR>[他者との交流から得る感動]では市が独自作成したピンシャン!元気体操等を用いてサロンを運営し参加者と交流を持つ中で参加者の変化に感動を得ていた。この感動から、参加者や地域づくりに役に立っている実感を得、地域のサポーターとしての自覚を新たにしていた。この感動から自覚へというプロセスが長期継続に必要な要素として示唆された。介護予防事業を担う理学療法士は、サポーターが参加者との交流を持ち、感動や実感を得られるような活動場所やプログラムの情報提供などを行う中で、サポーターと協働した地域づくりをすることが求められると考えられた。<BR>本研究の対象は1名であり理論的飽和には至っておらず、今後、対象を拡大し比較検討する必要がある。<BR>【まとめ】<BR>前橋市の介護予防サポーターを5年間継続している女性へのインタビュー内容からM-GTAを用いてサポーターへの参加及び継続のプロセスを明らかにした。得られたプロセスから、参加の要因として[感謝される体験][市の事業という意識]、継続の要因として[他者との交流から得る感動][地域のサポーターとしての自覚]が考えられた。