著者
北島 信秋
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.47-58, 1994-03-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
39

1.オオバンの繁殖生態を千葉県我孫子市手賀沼において1990年4月から10月まで調査した。2.営巣は,雄が巣材を運び,雌がそれを嘴で受けて行った。営巣日数は約2~7日であり,この時の巣は交尾や羽の繕いにも使われていた。営巣場所は発見巣43巣中37巣がヒメガマ群落中にあり,6巣はマコモ群落にあった。巣材はヒメガマがほとんどであった。巣材の補給を抱卵期,育雛期も続けた。抱卵期には雛の孵化にあわせるように巣材運搬回数が増加していき,孵化時に巣は育雛用として数日使われた。3.産卵は4月上旬に始まり,5月にピークをむかえ,7月に終わった。産卵は1日1卵で,一腹卵数は平均5.2卵,卵重は平均35g,大きさは平均52.0×35.5mmであった。4.抱卵は雌雄で行い,特別な事情のないかぎり終日連続して,途切れることなく孵化まで続いた。1回の抱卵時間は平均51分,抱卵日数は21日~25日であった。また抱卵中は雌雄相互の給餌は見られなかった。雛の孵化後数日すると,それまでの巣と別に育雛用の巣を作って雛を育てた。雛への給餌は水面上で行われた。5.28巣で126卵が産卵され,その32%,40羽が孵化した。しかし2週間後に観察される雛数は12%に減少していた。営巣数43巣中,孵化に成功した巣は11巣,26%であった。卵の消失や巣の崩壊はイタチやカラス,人間,漁船の影響によるものが観察された。6.当地のオオバンの個体数の減少原因は,繁殖成功率の低さにあるとみることが出来る。今後繁殖成功率を低めている原因を詳細に研究する必要がある。