- 著者
-
北川 卓史
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2005, pp.115, 2005
_I_.はじめに.通信販売(以下通販)は,「距離の制約を越える」といわれ,19世紀アメリカで本格的に開始され,日本でも明治期にカタログ通販が展開するようになった.この通販には_丸1_宣伝広告,_丸2_受注,_丸3_商品配送,_丸4_代金決済の4つ機能が重要といわれている.これまで大規模な通販を行う事業者は,カタログやテレビといった広告媒体を使用した通販専門業者や,都市部の大型小売店などが目立った.また,郵政公社の「ふるさと小包」事業も見逃せない.しかし,消費者が実際に商品を手にとって選び,すぐに手に入れられないといった性質上,通販は商業全体から見ても傍流であるといわざるを得なかった._II_.インターネット通信販売の動向.インターネット通信販売は,広告媒体としてテレビやカタログを使用する場合と比較して,_丸1_検索機能による商品検索_丸2_商品の比較_丸3_在庫などの情報更新_丸4_24時間閲覧と注文,などが迅速かつ容易に行うことができ,事業者にも消費者にもその利便性が評価されている。『平成15年度電子商取引に関する実態・市場規模調査』によると,個人向け電子商取引(以下BtoC EC)の市場規模は4兆4240億円と推計されており,平成10年と比較して,約69倍に拡大している.これはドラッグストアやホームセンターなどの市場規模を越え,約7兆円規模のコンビニエンスストア市場に追いつく勢いである.この急成長に寄与したのは情報通信環境の整備が進行したためであろう。日本のインターネット世帯普及率は,50%以上であるといれており,都市部ほど普及率が高い.更にインターネット接続可能な携帯端末や常時接続サービスが広く普及している点も見逃せない.このように事業者も消費者も安価で手軽にインターネットを利用できるようになった.ただし,例えばインターネット上にホームページを作成する資本や能力に乏しかったり,作成できたとしても商品を並べただけでは集客にならない.実際BtoC ECを取り組む事業者数は約5万前後存在しており,そのうちで3万7千程度が従業員50名未満かEC売上高1億円未満の中小規模事業者であると推定されている.そのため,大多数を占める中小規模事業者は,インターネットショップ(以下ネットショップ)運営のシステムやノウハウをインターネットショッピングモールなどに出店することで,補完する事業者が多い.『インターネット白書2004』によるとネットショップを出店する事業者のうち約6割が,その第1店目を楽天市場のショッピングモールに出店している.楽天市場などでノウハウや顧客を掴んだ後,独立して自社独自のホームページを作成し,ネット通販を拡大する事業者も存在しており,インターネットショッピングモールが中小事業者のネット通販事業におけるインキュベーターの役割を果たしているという側面もみられる.また,商品配送機能や決済機能について言及すると,1980年代に全国津々浦々をカバーする個人向け宅配便ネットワークが完成した.さらに冷蔵・冷凍品への対応と航空機利用などにより配送時間の短縮が図られたため,生鮮食料品や花卉など劣化の早い商品も配送可能となり,通販取扱商品に幅が広がった.決済機能については,振込などだけでなく,運送会社による代金引換が重要である._III_.楽天市場について.1997年5月にインターネットショッピングモール事業を開始し,2005年6月時点で約11,000店が出店している.月平均注文件数は約150万件で,流通総額は月平均150ー200億円と言われている.