著者
北川 和博
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.69-76, 1993-03-17

昭和48年,帯広市に通級制情緒障害学級が開設され,平成4年度で20年を迎えることとなった。本研究では,帯広市の情緒学級のあゆみを様々な角度から調査・検証し,その歴史的,地域的意義をまとめ,今後の展望を図ろうとするものである。調査の結果,20年の通級児童の数が174名をかぞえ,子どもの実態は自閉的傾向児,登校拒否傾向児をはじめとした集団内で適応しづらい子どもたちであるが,情緒学級は子どもの実態にかかわらず,普通学級および特殊学級から受け入れてきた。その変遷過程をたどると,自閉的傾向児主体からいわゆる「集団不適応」へと移り,その背景には,就学指導休載の変化,登校拒否傾向児の増加,乳幼児期の地域療育システムの充実等,時代の変動と,地域の実情に影響されていることが分かる。実践研究は,事例研究を重視しながら,疎通性を育て高めるための指導,個々の子どもに合った指導目標の確立,情緒障害児の効果的な諸検査と指導方法,コミュニケーションとしての言語指導へと積み上げられてきている。帯広の情緒障害教育が20年を経過した現在,自閉的傾向児主体の治療教育的役割から,普通学級の援助学級的役割を求められる時代となっているが,これはこの学級が歩み出そうとした開級当初の地域ニーズにもどった観がある。