著者
相澤 志郎 北川 昌伸
出版者
独立行政法人放射線医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

C3Hマウスにフレンド白血病ウイルス(Friend leukemia virus : FLV)を感染させ、1週後に低線量(3Gy)のX線を全身照射(Total body irradiation:TBI)すると、造血器系の細胞に著明なアポトーシスが誘導され、照射後約2週の経過でマウスは貧血を起こして死亡する。ところが、感染後2週目に照射したのでは造血死は起こらない。また、フレンドウイルス感受性マウスであるDBAマウスでは同様の処置を行っても造血死は起こらない。ウイルス感染と照射の間隔の遠いによる造血死の発生の有無について間隔を細かくして検討したところ、ウイルス感染後5,6,7,8日目に照射した場合に著名な造血死が観察され、フレンドウイルス感染後の極めて限られた期間で感受性であった。ウイルス感染後1週日と2週日の造血幹細胞(CFUs,CFU-E)の放射線感受性を検討したところ、1週目の造血幹細胞が著しく感受性であった。したがって、造血細胞の放射線感受性の亢進が造血死の原因と考えられたが、その分子機構についてはまだ明らかでない。DBAマウスについては、ウイルス感染による放射線感受性の亢進時期がシフトしていろ可能性が考えられたので、間隔を変えて検討したが、いずれの場合でも造血死は観察されずその可能性は除外された。