著者
北川 美弥
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.31-33, 2020-04

放牧草地は牧草が生産される畑であるが,野菜等が生産される一般の畑とは異なる点を持つ。例えば,(1)造成後は,長期間耕起されない,(2)家畜が放牧される,(3)地形が複雑,といった点である。このため雑草管理においても,一般の畑とは異なった視点で対応することが求められる。これまで,日本草地学会誌において草地の雑草管理についてさまざまな報告がなされている。しかし近年,専門とする研究者は減少し,報告数も減っている。2019年度日本草地学会広島大会の発表における関連発表は4課題である。一方で,雑草管理に苦慮している牧場・農家は依然として多い。加えて地球温暖化の影響などから各雑草の生育地域に変化が生じているのみならず,新たな雑草の侵入も報告されている。これまでの研究結果をもとに対応することが可能な問題もあるが,現状に即した対応のためには,継続的な研究は不可欠である。そこで,放牧草地における雑草管理について整理を行い,これを通じて今後必要な対応を検討するきっかけとしたい。
著者
西田 智子 原島 徳一 北原 徳久 柴田 昇平 北川 美弥 山本 嘉人
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.555-562, 2004-02-15
被引用文献数
1

永年草地の多年生雑草であるワルナスビについて,その播種時期とワルナスビの播種当年4月に播種したオーチャードグラスとの競合が出芽および生育に及ぼす影響について調査した。プラスティックコンテナを使い,ワルナスビ種子を4-8月までほぼ1ヶ月おきに裸地条件(裸地区)とオーチャードグラスとの競合がある条件(OG区)で播種した。裸地区では,7月播種区を除いて80%以上の出芽率であった。一方OG区では,5月播種区までは45%以上の出芽率となったが,それ以降はほとんど出芽しなかった。播種翌年の5月末における萌芽数は,裸地条件4-6月播種区では,播種当年に出芽した個体のほぼ全部が萌芽したと考えられたが,OG区ではほとんど萌芽しなかった。播種当年9月および翌年5月におけるワルナスビの生育は播種月が早いほど優っており,裸地区ではそれが顕著であった。OG区の生育は裸地区に比較して非常に少なく,生育量の傾向は播種翌年の5月における萌芽数の傾向と良く一致した。以上の結果から,OGが繁茂した草地でのワルナスビ実生の定着は困難なものと推察された。