著者
北御門 学 荒木 利芳
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

海藻葉体細胞壁の構成多糖は、陸上植物のものと異なったものが多く、分解酵素も殆ど知られていない。それ故、海藻葉体のプロトプラスト融合の研究には、海藻多糖分解酵素の開発が不可欠である。本研究は、細菌及び海産動物の消化器官を原料として、これらの分解酵素を得ようとしたものである。まず、非水溶性または水溶性多糖分解細菌の鑑別法について検討し、後者について一つの鋭敏な鑑別法を考案した。つぎに、主として海水環境から集めた細菌分離用試料を、目的とする海藻多糖を唯一の炭素源とする制限平板培地上に塗抹して培養し、形成したコロニ-を釣って多糖分解鑑別用培地に移植した。分解能があると鑑別された細菌は、純粋培養としてから、多糖分解酵素産生力を測定した。このようにして、多糖分解酵素産生力の強い細菌として、菌株Aromonas sp.F-25(β-1,4-マンナン分解細菌)、Vibrio sp.AX-4(β-1,3-キシラン分解細菌)、Vibrio sp.AL-128(アルギン酸分解細菌)、Vibrio sp.AP-2(ポルフィラン及び寒天分解細菌)、Vibrio sp.FU-629(フコイダン分解細菌)を得た。また、サザエ中腸腺アセトン乾粉の水抽出液も種々の海藻多糖の分解酵素を含有していることを明らかにした。最後に、分離細菌の酵素、または分離細菌の酵素とサザエ中腸腺酵素との混合酵素を使用し、多くの緑藻、褐藻、及び紅藻の葉体からプロトプラストを分離した。分離したプロトプラストの一部は、栄養補強海水中に移して培養すると細胞壁を再生し、分裂を開始した。