著者
若村 定男 北村 実彬 高橋 正三
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.227-231, 1975-12-25
被引用文献数
1

透明プラスチックの箱(容積46.7<i>l</i>)に,20個のフェロモンホルダーをとりつけ,それぞれに,合成性フェロモン<i>cis</i>-9, <i>trans</i>-12-tetradecadien-1-ol acetateを350μgずつ浸み込ませ,羽化後間もないスジマダラメイガ(<i>Cadra cautella</i> WALKER)成虫を2対入れ,配偶行動の観察と,産卵数の調査を行なった。フェロモンを供試しなかった対照区では,第2夜までに,すべての雌に交尾が観察されたのに対し,フェロモン処理区では,第4夜まで観察を続けたが,交尾は1例も認められなかった。また,ホルダーあたりの供試量を35μg, 3.5×10<sup>-2</sup>μgと減ずるに従って,交尾は,より早い時期に高いひん度で観察され,3.5×10<sup>-4</sup>μgの場合には,対照区とほとんど差がなくなった。したがって,スジマダラメイガの密度が十分に低い条件では,多量の合成フェロモンにより,交尾が阻害されることが確認された。また,交尾阻害の程度は,合成フェロモン供試量と依存関係にあることも示された。<br>同様の実験を,性フェロモン類縁化合物の一つである<i>cis</i>-9-tetradecen-1-ol acetate (<i>c</i>-9-TDA)についても行った。<i>c</i>-9-TDAは,スジマダラメイガの雄に対し,性フェロモンの10<sup>4</sup>倍の量を供試すると,同程度の性フェロモン活性を示す。しかし,実験の結果<i>c</i>-9-TDAは合成性フェロモンと同程度の交尾阻害力を有することが確認された。