著者
高井 幹夫 若村 定男
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.115-120, 1990-05-25
被引用文献数
3 1

施設ネギにおいてシロイチモジヨトウに対する高濃度の合成性フェロモン処理とライトトラップによる成虫捕獲の効果を現地実験と成虫の放飼実験により調べた。<br>1) 1987年7∼9月に行った現地実験では,10a当り合成性フェロモン剤500本で処理した場合,および同様の処理を行った上でライトトラップを設置して成虫を捕獲した場合,ほぼ1か月以内に幼虫密度は激減した。同100本で処理した場合には顕著な密度低下は起こらなかった。また,無処理区では幼虫密度は急増した。<br>2) 雌雄成虫の放飼実験により合成性フェロモン処理とライトトラップ点灯処理が交尾率に及ぼす影響を評価した。無処理の場合,第2夜までにすべての雌が交尾した。合成性フェロモン処理またはライトトラップ点灯処理の場合,第1夜の交尾率は20∼50%に,第2夜までの累積交尾率は35∼65%にそれぞれ抑制された。両方の処理を同時に行うと,雌の交尾率はさらに著しく低下した。<br>3) 合成性フェロモン処理による交尾率の低下は雌雄間の交信攪乱効果,そしてライトトラップによる交尾率の低下は雄成虫の大量捕獲効果(雄除去効果)によって引き起こされると考えられた。また,ライトトラップには雌成虫の捕獲による防除効果も考えられた。
著者
若村 定男 北村 実彬 高橋 正三
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.227-231, 1975-12-25
被引用文献数
1

透明プラスチックの箱(容積46.7<i>l</i>)に,20個のフェロモンホルダーをとりつけ,それぞれに,合成性フェロモン<i>cis</i>-9, <i>trans</i>-12-tetradecadien-1-ol acetateを350μgずつ浸み込ませ,羽化後間もないスジマダラメイガ(<i>Cadra cautella</i> WALKER)成虫を2対入れ,配偶行動の観察と,産卵数の調査を行なった。フェロモンを供試しなかった対照区では,第2夜までに,すべての雌に交尾が観察されたのに対し,フェロモン処理区では,第4夜まで観察を続けたが,交尾は1例も認められなかった。また,ホルダーあたりの供試量を35μg, 3.5×10<sup>-2</sup>μgと減ずるに従って,交尾は,より早い時期に高いひん度で観察され,3.5×10<sup>-4</sup>μgの場合には,対照区とほとんど差がなくなった。したがって,スジマダラメイガの密度が十分に低い条件では,多量の合成フェロモンにより,交尾が阻害されることが確認された。また,交尾阻害の程度は,合成フェロモン供試量と依存関係にあることも示された。<br>同様の実験を,性フェロモン類縁化合物の一つである<i>cis</i>-9-tetradecen-1-ol acetate (<i>c</i>-9-TDA)についても行った。<i>c</i>-9-TDAは,スジマダラメイガの雄に対し,性フェロモンの10<sup>4</sup>倍の量を供試すると,同程度の性フェロモン活性を示す。しかし,実験の結果<i>c</i>-9-TDAは合成性フェロモンと同程度の交尾阻害力を有することが確認された。