著者
北村 憲彦 西村 紳 山本 亮平 青木 美香 田中 美有 桑村 充 嶋田 照雅 久保 喜平
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.519-522, 2015

1週間前より食欲絶廃を呈した6歳雌のミニブタが来院した.X線検査にて腹腔内腫瘤を認め,第7病日に開腹下で右背側の腫瘤を切除した.腫瘤は卵巣に近似した発生部位と病理組織学的所見より,顆粒膜細胞腫と診断した.術後症例はQOLが改善して身体状態良好に経過していたが,第223病日に突然神経症状を呈して死亡した.剖検では,下垂体に充実性腫瘤が脳実質を圧迫するように認められたが,腹腔内腫瘍の再発は認められなかった.下垂体腫瘤の病理組織学的所見は腹腔内腫瘍と同様であり,腹腔内腫瘍の細胞は<b>κ</b> light chain陽性であったことから,本症例の腫瘍をあらためて形質細胞腫と診断した.本症例は腹腔内腫瘍の外科的摘出により,QOLが改善して約7カ月間再発もなく良好に過ごせたことから,本症例において外科療法は有効な治療法であったと考えられた.