著者
北村 憲彦 西村 紳 山本 亮平 青木 美香 田中 美有 桑村 充 嶋田 照雅 久保 喜平
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.519-522, 2015

1週間前より食欲絶廃を呈した6歳雌のミニブタが来院した.X線検査にて腹腔内腫瘤を認め,第7病日に開腹下で右背側の腫瘤を切除した.腫瘤は卵巣に近似した発生部位と病理組織学的所見より,顆粒膜細胞腫と診断した.術後症例はQOLが改善して身体状態良好に経過していたが,第223病日に突然神経症状を呈して死亡した.剖検では,下垂体に充実性腫瘤が脳実質を圧迫するように認められたが,腹腔内腫瘍の再発は認められなかった.下垂体腫瘤の病理組織学的所見は腹腔内腫瘍と同様であり,腹腔内腫瘍の細胞は<b>κ</b> light chain陽性であったことから,本症例の腫瘍をあらためて形質細胞腫と診断した.本症例は腹腔内腫瘍の外科的摘出により,QOLが改善して約7カ月間再発もなく良好に過ごせたことから,本症例において外科療法は有効な治療法であったと考えられた.
著者
湯川 尚一郎 藤本 知美 湯川 元美 浅川 冨美雪 嶋田 照雅 久保 喜平
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.73-78, 2016-10-21 (Released:2016-11-07)
参考文献数
15

目的:動物看護師を対象とする,小動物診療施設内での放射線防護と放射線教育についての報告はなされていない.よって現職の動物看護師を対象に放射線に関する基礎的な知識・理解,放射線防護を正しく理解し実施できているかについて調査を実施した.対象と方法:各種動物看護師向けセミナー会場において,本研究の趣旨に協力の意思を示した現職の動物看護師255名を対象とした.最終的に230名を解析対象とした(有効回答率:90.9%).結果:「X線撮影補助時に被曝の影響に不安を感じるか」に対し,「不安を感じる」と回答した者は45%であった.「放射線と放射能の違い」「放射線の種類」という放射線の基礎的な知識についての質問に半数以上が「理解していない」「知らない」と回答した.「個人線量計を毎回着用している」と回答した者は半数に満たず,「個人線量計で自分の被曝量を把握している」と回答した者は30%未満であった.考察:動物看護師を対象に行われた今回の調査で,放射線の知識・理解不足等が認められた.また放射線防護に関する管理体制については早急な対策が必要である.今後,動物看護師に対してさらに詳細な調査を行い,対策を検討し,小動物診療施設における産業保健活動のより一層の向上を目指す必要がある.
著者
宮本 忠 塚本 康浩 嶋田 照雅 大橋 文人 桑村 充 山手 丈至 小谷 猛夫
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日獣会誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.711-713, 1999

グレート・ピレニーズ, 雄, 6歳が1年間にわたる間欠的食欲不振, 体重減少, 多飲・多尿, 運動不耐, 間欠的軟便を主訴に来院した. 血液検査では貧血, 白血球増加症, 高窒素血症, 高K血症, 低Na血症がみられ, 内分泌検査から原発性副腎皮質機能低下症と診断された. ヒドロコルチゾン (1mg/kg/day) と通常維持量の4分の1量の酢酸フルドロコルチゾン (6μg/kg/day) の併用で良好に維持された. 172病日に左側前肢手根関節の滑膜肉腫と診断され, 外科手術と化学療法を受けたがその後も副腎皮質機能低下症は良好にコントロールされた.
著者
久保 喜平 松山 聡 片山 久美子 堤 千津 米澤 久美子 嶋田 照雅 小谷 猛夫 佐久間 貞重 大橋 文人 高森 康彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.1335-1340, s・iii, 1998-12
被引用文献数
1

乳腺腫瘍は雌イヌにおいて高頻度に発生する腫瘍のひとつである.本研究では, 腫瘍マーカーとしての有用性を検討するためにイヌ乳腺腫瘍材料におけるc-kit遺伝子の発現を調べた.4種の哺乳動物のc-kit cDNAの塩基配列を参考にRT-PCR法のためのプライマーセットを合成し, イヌc-kit遺伝子を増幅した.正常イヌ脾臓の全RNAからのRT-PCR法により増幅したイヌc-kit遺伝子の大きさは756bpであり, 哺乳動物のcDNAの該当部分と高い相同性を示した.11例のイヌ乳腺腫瘍(腺癌, 良性混合腫および悪性混合腫)すべてにおいてc-kit mRNAの発現が検出された.イヌ乳腺腫瘍のうち, 腺癌におけるc-kit遺伝子の発現は, 悪性混合腫瘍に比べて有意に高かった.さらに, 15例の乳腺腫瘍以外の各種イヌ腫瘍組織標本におけるc-kitの発現も同様に検討した.肥満細胞腫の全例において, 高いmRNAの発現が認められたが, 残りの12例の腫瘍では, 5例で低レベルのRT-PCR産物が検出されたのをのぞいて, c-kit遺伝子の明らかな発現は見られなかった.以上の結果より, イヌ乳腺腫瘍では, c-kit遺伝子mRNAの発現が有意に高く, その診断上有用であると思われる.
著者
大橋 文人 黒田 一雄 嶋田 照雅 島田 保昭 大田 光明
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.803-804, 1996-08-25 (Released:2008-02-15)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

イオタラム酸(IOT)の猫における体内消失を検討するために健常猫及び実験的腎不全猫にイオタラム酸(IOT: 118.3 mg/kg)を静脈内投与し, その血漿消失速度を測定した. 一区画モデルによる解析で実験的腎不全猫のIOT血中消失速度は2.16±0.240×10-3μg/ml/minと健常群の値(4.10±1.00×10-3μg/ml/min)に比較して有意な低値を示し, 血漿IOT消失速度は猫の簡便なGFR測定法となる可能性が示唆された.