著者
中西 こずえ 北沢 右二
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.425-434, 1982-12-01

北九州市の人為による生態系の破壊と再生の系列に沿って6種の生態系型を調査地に選び蘇苔類の種類組成, 常在度, 被度を調べて比較研究した. 種数は産業医科大学構内のコンクリート舗装路の割れ目(2種), 低木の植込み(4種), 平坦地の芝生(7種), 斜面の芝生(12種), 構内の二次林(18種), 遠賀町のシイ自然林(23種)の順に増加した. 苔類は二次林(3種)と自然林(10種)のみに出現した. 舗装路の割れ目にはギンゴケ, ホソウリゴケが進入し, 植込みと芝生にはそれ以外にハリガネゴケ, ヤノウエノアカゴケ, ツチノウエノコゴケ, ネジクチゴケなどがみられる. これらは群落遷移における先駆的な種類であると共に, 大気汚染などの人為影響にもよく耐えうる. 芝生では平坦地よりも, 特に北向きの斜面に種数, 量とも多い. シイ自然林の蘇苔類はその大部分が山地など人為影響の最も少ない地域に出現する種類である. 産業医大構内では, 残存二次林の内に自然林との共通種が6種あったが, それ以外の地域には, シイ自然林との共通種は全く出現していない.