- 著者
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北野 晴人
- 出版者
- 安全工学会
- 雑誌
- 安全工学 (ISSN:05704480)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.6, pp.486-493, 2015-12-15 (Released:2016-07-01)
- 参考文献数
- 11
2015 年に明るみに出た独大手自動車メーカーによる不正な排ガス規制逃れは,企業としてのコンプライアンス問題としてだけでなく,その製造物(自動車)の性能に関する虚偽によって地球環境に対して影響を及ぼす大きな問題である.過去,多くの企業不正が問題となってきたが,とりわけ製造業分野における製造物関連の不正行為については,それが地球環境や社会基盤の安全性,場合によっては人命に関わるという意味で重大な社会性を帯びている.安全に関する技術的な研究開発が進展していく一方で,こうした人間の意図的な不正行為の防止・抑止という課題に対しては技術論だけで解決できないことは明らかであろう.本稿では,一連の製造物に関する企業不正は,情報セキュリティの視点から「情報の完全性に対する侵害」と捉えられることから,それを引き起こす人間の心理,組織風土等に着目し,不正を抑止するための方策について考察する.