著者
田村 裕之
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.438-444, 2014-12-15 (Released:2016-07-30)
参考文献数
2

太陽光発電システムの普及が急速に拡大している.しかし,火災事例や消防活動事例を調べると,太陽光発電システムからの出火や消火活動中の消防隊員の感電などが起こっており,火災や感電の面で安全対策が不十分なことが分った.そこで,太陽光発電システムが設置されている建物での出火危険性や消防活動時の危険性について,太陽光発電システムの構造や火災事例から課題を見出し,火災実験や発電実験を行った.その結果,火炎からの光でも発電すること,モジュールの一部が脱落しても発電を継続すること,モジュール表面の強化ガラスが熱によりフロートガラスに戻ること,人体に危険を及ぼす感電が起こりうること,などが分かった.これらを基に安全な消防活動を行うための対策をまとめた.
著者
早川 和一・鳥羽 陽・亀田 貴之 鈴木 信雄
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.85-92, 2011-04-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
15

今から14 年前の冬,日本海でタンカーが沈没し,流出したC-重油が日本海側沿岸に大量に漂着した.それまで原油の回収に効果を発揮した手法や機材も,原油より遥かに粘度が高いC-重油には殆ど機能せず,回収は人力作業に頼った.漂着した油は,岩や礫・石の海岸,特に手前に岩礁を有する遮蔽海岸に長期残存する傾向があった.C-重油に含まれる多環芳香族炭化水素類を指標にして,油の異同識別や汚染状況の把握が行われた.C-重油で汚染した海水を清浄海水に混ぜてヒラメの卵を飼育したところ,孵化した稚魚に脊柱彎曲が現れた.酵母two-hybrid 法を適用して調べた結果,水酸化多環芳香族炭化水素の中に強い攪乱作用を有する化合物があり,さらに構造活性相関があることがわかった.また,最近,日本海の多環芳香族炭化水素類の汚染の現状調査を開始した.
著者
中山 良男
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.427-434, 2016-12-15 (Released:2016-12-15)
参考文献数
27

火薬,爆薬そして手製爆薬による爆発物テロを想定し,最も脅威となる爆風と爆発飛散物の威力について概説する.最初に,爆発物テロの現状を紹介し,続いて爆発反応の形態に爆燃と爆轟の2 種類があり,爆発の威力が大きく変化することを解説する.次に,TNT 爆発による爆風のピーク静水過圧と正圧相インパルスの距離減衰特性を説明する.TNT 以外の爆発物の爆風威力はTNT 換算薬量で示されるので,その算出方法を解説し,あわせて代表的な爆発物のTNT 換算薬量率を紹介する.爆発飛散物については,金属容器に詰められた爆薬から発生する爆発破片の初速度の評価式を解説する.爆発による人体損傷は一次から四次の爆傷に分類されること,およびそれらの損傷レベルについて紹介する.最後に,テロ時の避難距離と火薬類取締法による各種保安物件までの安全距離などを比較する.
著者
高橋 正好
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.352-357, 1998-10-15 (Released:2017-04-30)

二酸化炭素は人体において代謝活動の結果生産される物質であり,また酸塩基平衡の維持などの重要な役割を担っている.しかし,過剰に存在した場合にはさまざまな悪影響を及ぼす.本資料においては,人体内における二酸化炭素の役割や,危険性などについて整理した.
著者
片山佳子・村松明日佳・伏脇裕一
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.356-361, 2017-10-15 (Released:2017-10-18)
参考文献数
17

食品添加物の着色料として使用量の多いカラメル色素について,その種類,特徴,有用性,機能性,食品への利用,毒性および安全性について考察した.特に,カラメル色素の製造過程で発がん性を有する4- メチルイミダゾールが副生成されるなどの安全性について諸外国についての事例を挙げて詳述するとともに,カラメル色素についての問題点および課題についても言及した.
著者
野口 邦和
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.381-388, 2011-12-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
16

福島原発事故時に原子炉内に存在していた放射性核分裂生成物の量を推定した.原子力安全・保安院等の評価をもとに,同事故により大気中および海洋に放出された主な放射性核種の放射能量を概括した.原子力安全委員会の『原子力施設等の防災対策について』が如何に机上の対策であったかを指摘した.避難住民など周辺住民の汚染状況等について紹介した.放射性ヨウ素をめぐる問題では,甲状腺被ばく線量について依然として不透明な部分が多いことを指摘した.緊急作業者の被ばくについては,緊急作業時の被ばく線量上限値が250 mSv に引き上げられた問題を指摘するとともに,東京電力の労働者被ばく管理の実態を紹介した.食品の放射能監視の基準値となっている原子力安全委員会の「飲食物摂取制限に関する指標」の意味付けを紹介した.また,今後の大地放射線量の推移について予測した.低線量被ばくの発がん問題について考察した.

20 0 0 0 OA 破傷風

著者
古橋 正吉
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.206-212, 1967-09-15 (Released:2018-11-10)
著者
國方 貴光
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.44-48, 2017-02-15 (Released:2017-02-15)
参考文献数
2
著者
大関 崇 吉富 政宣
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.162-172, 2013-06-15 (Released:2016-07-30)
参考文献数
13

太陽光発電システムが持つ上記の特徴は,電源構成の豊富さや新規雇用創出といったメリットを社会にもたらす一方,ハザードをも内包している.各種構成要素から発生するリスクとして,電気火災,電気感電,構造物飛散,設計・施工時の人身事故などが想定される.太陽光発電システムを本格的にエネルギー源として利用するためには,メリットをより拡張しつつ,これらリスクに関して,個人財産および公衆安全の観点から許容可能なところまで低減する必要がある.本稿ではこれらのリスクのうち,直流電気火災に注目し,事前の火災防止・抑止の観点と,発生後の消火活動における消防士保護の観点におけるリスク等を概説することで安全工学の研究者の方々と太陽光発電システムの現状について情報共有することを目的とする.
著者
柿田 公太郎
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.360-367, 1970-12-15 (Released:2018-10-17)

16 0 0 0 OA 爆発現象の解析

著者
田中 克己
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.383-389, 1997-12-15 (Released:2017-04-30)

気体や火薬類の爆発現象の解析手法にっいて,爆発特性,着火機構,燃焼火炎の伝播,爆轟への転移および爆風の発生と被害について解説し,それらの現象を流体力学的に解析する手法について概説した.
著者
髙根 雄也
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.7-14, 2018-02-15 (Released:2018-02-15)
参考文献数
39
被引用文献数
1

近年,気候変動に関連し世界中で猛暑が頻発しており,これらの猛暑の発生頻度は今後ますます増加すると予測されている.猛暑は人間健康や電力需要,農業等へ悪影響をもたらすため,これらの具体的な対策を立てる必要がある.そのためには猛暑の特徴を理解することが望ましい.そこで本稿では近年国内で発生した地域スケールの猛暑の特徴について解説する.
著者
中川 敦寛・冨永 悌二 大谷 清伸 富田 博秋 久志本 成樹 Rocco Armonda
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.441-446, 2016-12-15 (Released:2016-12-15)
参考文献数
25

爆風損傷は爆発に伴い発生する爆風に暴露され生じる.一般の臨床医が経験する外傷機転に加えて,衝撃波を伴う圧損傷が複合的に生体に影響を及ぼし,損傷が発生する.イラク戦争,アフガニスタン紛争以降,爆風損傷が著しく増加し,軽症例における高次脳機能障害,心的外傷後ストレス障害の頻度が高い可能性が示唆されたことから,新しい疾患概念として認識されるようになった.眼,耳,肺,消化管,心臓血管系の損傷も特徴的であるが,受傷早期に顕在化しないことがあり注意が必要である.外傷初期診療ガイドラインに沿った対応を行うとともに,損傷時の状況の把握を含めて衝撃波を伴う圧損傷のリスク階層化と病態を考慮した治療を行う. テロや産業事故による爆風損傷は遠い存在ではなく,わが国においても救急に携わる医療従事者,関係者も病態と診断・治療に関する一定の知識を持っていることが望ましい.
著者
石原 嘉一
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.155-160, 2010-06-15 (Released:2016-09-30)
参考文献数
3

世界各国で現在,環境の観点等からも鉄道は脚光を浴びており,様々な国・地域において鉄道建設が計画されているが,国際市場への参入において日本の車両メーカーは苦戦を強いられている.その背景には,鉄道システムに関して,システム全体の安全性・信頼性を立証する手法として“RAMS 規格”,“鉄道RAMS”と呼ばれている国際規格(IEC 62278)の存在がある.このRAMS 規格は,今や欧州はもちろんのことアジア等の新興市場においても採用されつつあり,システムアシュアランスアプローチをベースとして,安全性および信頼性などシステムの要求項目を満たしていることを示すことが国際的な共通認識となっている.システムアシュアランスアプローチにおいては,ドキュメンテーションとトレーサビリティが非常に重要であるが,鉄道システムの海外輸出の際には,鉄道RAMS への対応が,今まで以上に強く求められるようになっていくと考えられる. IEC 62278 は機能安全規格の一種であり,IEC 61508 の流れを汲むものである.現在,IEC 61508 は様々な産業分野に展開されている.今後,日本の製造業が技術力に見合った国際競争力を保有するためにも,システムアシュアランスアプローチを確実に効果的に効率よく導入していくことは必須であり,そのためにRAMS 規格・システムアシュアランスアプローチの概要と,そのポイントについて考察する.
著者
松本 洋
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.185-190, 2009-06-15 (Released:2016-10-31)
参考文献数
16

国内では,年平均6 件ほどの粉じん爆発事故が起きていると推定されている.危険物施設でも年間に3 ~4 件の粉じん爆発事故が発生していることから,粉じん爆発のほぼ半数が危険物施設で発生していると考えられる.粉じん爆発では,高温の燃焼生成物が燃えながら飛来することから重度の火傷を負うことが多く,ほとんどの事例で死傷者が発生している.米国でも,多数の死傷者を伴う大規模な粉じん爆発事故が絶えない.粉じん爆発は,可燃性の粉体を取り扱うすべての場所で発生する可能性があるが,身近な潜在リスクとして認識されることが少ない.そこで,国内の危険物施設における粉じん爆発事例と米国の大規模粉じん爆発事例を紹介するとともに,その危険性と防止対策について述べた.
著者
吉富 政宣
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.445-454, 2014-12-15 (Released:2016-07-30)
参考文献数
11

太陽光発電システム(PVS)には,陽が当たる限り発電を止めることが出来ない性質があり,火災時には消防隊員が感電する恐れから消火活動が困難になることがある.また,PVS は屋外に設置されているため,風・雪・地震と言った自然の作用による構造事故も引き起こしてきた.このようにPVS の危害は火災と構造事故とに二大別1)できる.PVS を健全なエネルギー源に成長させるためには,少なくとも個人財産保護の観点からこれらリスクを許容可能なレベルにまで低減する必要がある.そこでこれまで期待総費用最小化原理が提唱されてきた.しかし,火災・構造事故には期待利益の無い第三者を一方的に加害する恐れがある.そこで本稿では,公衆安全優先のための無加害原則を提唱する.この無加害原則は,期待総費用最小化原理に優先させる必要があると考える.
著者
小林昭夫吉田昌弘
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.421-428, 1975-12-15 (Released:2018-06-30)

高度成長の影に種々の弊害が残り,河川の汚濁もその1つである,具体的な対策として工場廃水規制,下水道の整備などがとられているが,都市近辺の河川を昔に戻すには,今後一層の努力が必要である.河川の自浄作用には酸化などの溶存酸素が要因となるものと,沈澱などのそれ以外のものに分類できる.汚濁物が河川の自浄能力以上になると溶存酸素量が少くなり,魚の生息どころか悪臭さえ発散するよう になる.それらの浄化対策としては,沈澱した底泥はしゅんせつによって取り除き,化学的・土木的・機械的な方法で,再曝気をはかる必要がある.その実施例として,和歌川のしゅんせつ,山谷堀川築地川の悪臭防止をとり上げ,酸素による河川浄化法について説明する.