著者
十川 千春
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、モノアミントランスポーター発現動態の解析を申心に、疼痛に関わる下行性抑制系神経におけるモノアミントランスポーターの役割と疼痛制御への関与について検討し、歯科領域で問題となっている神経因性疼痛の有効な治療法の開発基盤を得ることを目的とする。われわれはこれまでに、ヒトDAT(hDAT)およびヒトNET(hNET>には、末梢組織においてエクソン6を欠失する新規のスプライシングバリアントが存在することを見出してきた。さらに、今年度はこれらのバリアントの発現および機能調節について検討を行った。hDAT、hNETの野生型(FL)およびエクソン6欠失バリアント(-EX6)をCOS-7細胞にそれぞれ形質導入し、3^Hラベルした基質の取り込みにより基質輸送活性を、また、ウエスタンブロッティング法および免疫染色法にて細胞局在について検討を行った。さらに免疫沈降法によりFLと-EX6の相互作用についても検討を行った。hDAT-EX6およびhNET-EX6はいずれも、基質輸送活性が著しく低下しており、hDAT-EX6はコカインのアナログであるWIN35,428の特異的結合がみられなかった。また、ウエスタンブロッティングの結果より、両バリアントともに膜への移行が著しく低下しており、hDAT-EX6はFL-hDATよりも膜への移行が著しく遅いことが分かった。さらに、hDATについて免疫染色の結果より、FL-hDATはC末端領域が細胞内へ存在するが、hDAT-EX6はC末端領域が細胞外へ局在していることが示唆された。次に、FLと-EX6の相互作用について調べるため、FL-hDATとhDAT-EX6を共発現させた場合、基質輸送活性のVmaxが著しく低下し、km値も低下していた。また、膜への発現も低下しており、FL-hDATとhDAT-EX6は細胞内でヘテロ二量体を形成することが明らかとなった。以上の結果より、ヒトカテコラミントランスポーターのエクソン6欠失バリアントは野生型と結合して野生型の膜移行を制御し、発現・機能調節に関与していることが明らかとなった。神経伝達物質であるノルエピネフリンおよびドパミンの再取り込み機構をつかさどるNETおよびDATの発現調櫛がアイソマーム間の相互作用により制御されている可能性が示唆された。