著者
水口 仁 千住 孝俊
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

「酸化物半導体の熱励起を利用した完全分解」に関して、以下に示す4項目の検討を行った。1.ディーゼル排気ガスに含まれるトルエン、ベンゼン、黒色粒状物質(PM)の完全分解。2.各種の酸化チタンのキャラクタリゼーションと最適酸化チタンの探索。3."酸素過剰下における完全分解"から発想を転換し、"酸素欠乏状態"でメタノールならびにメタンの部分分解による水素生成を達成。4.VOC等への応用を考慮すると、酸化物半導体の支持体への担持が要素技術となるので、粉体を電気泳動電着法により発熱体への担持する手法、ならびにアルミナボール上にチタンやスズが被覆された金属ボールの直接酸化で担持する手法を確立した。項目1のディーゼル排気ガスの完全分解はディーゼルエンジン対策のみならず、一般の有害ガス、悪臭等の浄化に極めて重要な技術となる。我々は流動床タイプの分解システムを使って、排気ガスの成分であるトルエン、ベンゼンの完全分解、ならびにPMの完全分解を達成した。この研究成果を実用化に結びつけるには、現行の粉体システムから粉体を支持体へ担持する方法が要素技術となると考え、項目4の担持方法の検討に入った。項目2のスクリーニングで選び出した最適酸化チタン(ST-01:石原産業(株))を泳動電着法でNi-Cr線のような発熱体に直接担持することに成功した。この担持法の優れた点は酸化チタンの熱励起に必要な発熱体がシステムに内蔵されていることである。さらに、最適な酸化チタンの特性を損なうことなく担持出来ることも大きな特徴である。また、TiあるいはSnを被覆したアルミナボールの直接酸化のメリットは、酸化物半導体層を簡便な手法で調製できることである。更なるメリットは本ボールを最蜜充填で配置しても常に26%の空隙率が確保でき、目詰まり等の心配がないことである。本研究で検討した担持化の手法は項目2で述べたメタノールやメタンの部分分解により水素を生成する際のシステムにも適用することができる。