- 著者
-
千布 拓生
日置 佳之
- 出版者
- 日本景観生態学会
- 雑誌
- 景観生態学 (ISSN:18800092)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.2, pp.89-108, 2013-12-25 (Released:2014-12-25)
- 参考文献数
- 29
- 被引用文献数
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3
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2009年の自然公園法改正で同法の目的に「生物多様性の確保に寄与すること」が明記され,自然公園が生物多様性の保全に大きく貢献していくことが期待されている.そのため,今後は各自然公園において生物多様性の保全・再生に関する面的計画の立案と実行が求められる.本研究では大山隠岐国立公園大山蒜山地域の奥大山地区を事例として,GISを用いて生物多様性の保全・再生に必要な多種類の情報を併せ持った植生データベ-ス(DB)の構築を試みた.この植生DBはベクター型電子地図とその属性情報によって構成されている.植生DBのポリゴンの境界線は,基本的には林野庁または鳥取県が作成した森林基本図の小班の境界線をもとに描き,森林簿が有する属性情報を取り入れた.また,各小班は必要に応じて現況の土地被覆・植生に合わせて細区分し,これを『植生パッチ』として植生DBの最小単位とした.本研究で作成した植生DBは以下の特長を有している.①縮尺1/5000で,詳細な土地被覆や植物群落の情報を含み,植生管理などに用いることができる.②過去4時期(1958年・1974年・1996年・2012年)の土地被覆履歴に関する情報を有し,植生遷移や土地被覆の変遷を把握できる.また,それをもとに将来の植生遷移の動向を推定することができる.③土地所有や国立公園の保護規制計画などの情報を有し,地域性の自然公園の管理に有用である.